教育モデルの裏づけとして挙げるのが米教育心理学者のベンジャミン・ブルームの「2シグマ」問題だ。1対1の個別指導を受けた生徒は従来の集団授業を受けた生徒よりも「2標準偏差値(2シグマ)」高くなるという研究だ。さらに認知負荷理論、発達の最近接領域など教育学の理論を実装し「学習意欲こそが90%の解決策」という思想のもと、子どもたちに自由時間を返すことを最大のモチベーターとしている。
アルファ・スクールによると、2024〜25年度、同校の生徒はMAPテスト(全米で行われる学力評価テスト)全米上位0.1%の成績、成長率はベースライン予測の200%、11年生の平均SAT(アメリカの大学進学希望者を対象とした共通テスト)は1535点(1600点満点)だったという。──毎日たった2時間の勉強で、だ。
ライフスキルのほうはどうか? Airbnbのオーナーやフードトラックなど、小学生が実際に利益を出すビジネスを立ち上げ、10歳の女の子がTEDトークに登壇し、中学生が本を出版している。
ビリオネア起業家の参画
もうひとつ、アメリカのメディア、特にビジネスメディアがこのアルファ・スクールに注目する理由がある。往年のビリオネアで謎多き起業家、ジョー・リーマンツがその共同創設者、出資者、校長として名を連ねているからだ。
リーマンツは1989年に、スタンフォード大学を中退し、トリロジー(Trilogy)を創業した。製品の構成・設定(コンフィギュレーション)や販売自動化のソフトウェアを手がけ、ヒューレット・パッカードやボーイングなどの大企業を顧客にもち、96年までに年間売り上げ1億2,000万ドルを達成。米フォーブスは同年に2度、リーマンツを表紙にしている。同社の社員教育で有名だったのが、「Trilogy University」だ。100日間、週100時間の新入社員特訓プログラムで、後にグーグルやフェイスブックが同様のブートキャンプを設けるうえで参考にしたといわれている。実地学習にこだわり、新入社員が各セクションや役割、チームを割り当てられ、製品アイデアの考案、プロトタイプの制作、ビジネスモデルと販促計画の立案をした。リーマンツがVCを演じ、実際に採用・実装したプログラムもあったという。一方で、金曜日の夜のパーティ、ラスベガスへのチャーター機など、派手な報酬もあり、トリロジーがシリコンバレーの男性中心の排他的な文化を築いた、と批判されたこともある。
(続きは6月25日発売「Forbes JAPAN 2026年8月号」でご覧ください。)
マッケンジー・プライス◎アルファ・スクール共同創設者。スタンフォード大学心理学部(BA)卒業後、ソフトウェア企業トリロジーにマーケティング・事業計画担当として入社。同社幹部のアンドリュー・プライスと結婚。2014年にブライアン・ホルツとともにエマージェント・アカデミー(現アルファ・スクール)を共同設立。


