メンタル不調ゼロの理由
DX営業部は強烈な成果を出しただけではない。過去5年で100人以上の新卒社員が配属されたが、定着率93%で、メンタル不調による休職者もこれまでのところゼロなのだ。離脱が少ない組織になった理由を、森田は「成長実感と貢献実感を得られているからではないか」と自己分析する。
「新入社員を指導するのは2年目の社員。去年の自分と同じ立場の人と接すれば、1年で自分がどれだけ成長したのかわかる」
貢献実感に寄与しているのは、組織改革プロジェクトだろう。デジタルマーケティングによる顧客接点づくりからインサイドセールスの運営まで、現在の営業体制の仕組みづくりを担ってきた営業企画部部長の田中功二はこう証言する。
「架電業務だけだと精神的にキツい。そこで業務時間内に、組織に足りないものをみんなでつくるプロジェクトを走らせています。4〜5人ごとにテーマを出してもらったら、いろいろなアイデアが出てきました」(田中)
あるチームは、アカウント営業との座談会を提案した。DX営業部と既存組織でときに顧客が重なり、摩擦が起きることがあったからだ。この提案は実現して、駒川と田中、そして新入社員らは全国の支店を訪れ、自分たちの取り組みを説明して回った。
別のチームは、「マニュアルがあったほうがやりやすい」「来年の新卒が迷わない」とプレイブックの作成を進めた。プレイブックはインサイドセールスの進化とともに今も更新され続けている。
ガス抜きとしてアイデアだけ受け付ける組織もあるだろう。しかし「何かやりたいと言ってくれば、止めないで裁量を渡す」(森田)がDX営業部の方針。自分たちの提案がかたちになる経験を重ねたことで、組織に貢献している実感を得られたのだ。
DX営業部はセールステックの活用を推進しており、新入社員から「このツールを使いたい」と提案があがってくることも多い。「社員から提案があれば、まず資料請求してみようと話しています。そうすればベンダーから連絡があって、次は自分がインサイドセールスを受ける立場になる。ツールを導入すると同時に勉強にもなって一石二鳥」(田中)
イトーキは現在、「オフィス3.0」を掲げ、データを活用してオフィス運用を支援するビジネスに注力している。DX領域が広がるにつれて営業に求められる知識の幅は広がって業務も煩雑化するが、DX営業部の成功はこれらの課題に取り組むヒントになるという。最後に森田は今後の展望をこう話してくれた。「営業がやるべきことが増えるなら、生産性向上と教育のリードタイム短縮は必須。どちらもAIを活用していきますが、後者はインサイドセールスで蓄積したノウハウや型も応用できるはず。これまで培ったことを全社に展開し、強い営業組織をつくっていきたいですね」
中央:森田良一(もりた・りょういち)◎執行役員 営業本部 副本部長
右:駒川堅一(こまがわ・けんいち)◎営業本部セールスディベロップメント統括部 統括部長
左:田中功二(たなか・こうじ)◎営業本部営業企画統括部営業企画部 部長
【訂正】
Forbes JAPAN 2026年8月号「NEW SALES OF THE YEAR」特集内で、イトーキのDX営業部社員の定着率を97%と表記している箇所がございましたが、正しくは93%でした。
誤:97%
正:93%
お詫びして訂正いたします。


