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2026.06.17 17:45

まちづくりに必要な「近さ」と「遠さ」の「和え方」とは?

地域を「編集」する――「近さ」の五感と「遠さ」の視座

人間による「地域の編集」の真髄は、この「近さ」と「遠さ」の絶え間ない往復運動に他なりません。

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地域の編集において、まず不可欠なのが「近さ」です。これはフィールドリサーチの鉄則であり、その土地の「肌触り」や「匂い」、人々の「息づかい」を五感で受け止めるプロセスです。私が八尾市役所時代に始めた「食べ歩きブログ」や、今も大切にしている現場主義の原点はここにあります。デスクトップ上のデータでは、そのまちの本当の熱量は測れません。実際に路地を歩き、工場の油の匂いを嗅ぎ、職人と車座になって酒を酌み交わすことでしか触れられない「本音」があります。ARKadeのコミュニティマネージャーたちが現場に常駐することの意味も、まさにこの「五感の共有」にあります。

一方で、「近さ」だけでは地域の全体像を見誤ります。そこで重要になるのが「遠さ」の視点、すなわち歴史的・文化人類学的な考察です。地域の歴史、風土、産業の変遷を俯瞰して眺めることは、その土地が持つ「固有の文脈(ルーツ)」を探り当てる行為です。

文化人類学的な視座を持って、自分たちの営みを「遠く」から眺めてみる。すると、日常の風景が「特別な物語」へと変わります。尼崎というまちが重ねてきた重厚なものづくりの歴史を、現代の文脈で再解釈し、未来へと繋ぐ。現場の職人のこだわりという「近い視点」に、外部の「遠い視点」をぶつける。この交錯する瞬間に、これまでにない革新的な問いが生まれ、地域の価値が更新されるのです。

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今年のFactorISM説明会の様子
今年のFactorISM説明会の様子

まとめ:自らが「糠床」となり、未来を問う

かつての産業政策は、技術支援や設備投資といった「モノ(テクニカル)」への投資が中心でした。しかし、私たちが注力してきたのは「人(ヒューマン)」、つまり情熱やモチベーションといった「情緒的価値」です。

行政と企業が対等なパートナーとして共に困難を乗り越えるプロセスで蓄積される信頼関係こそが、目に見えない「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」となり、地域の持続可能性を支える基盤となります。「かっこいい」という直感的な憧れや、「楽しい」というワクワクする感情は、どんなに優秀なAIにも醸し出すことはできません。

FactorISMは2026年、100社を超える参加企業となりました。今年のテーマは「響く」。今年は、一昨年より参加している三重県の企業に加え、石川県から3社、東京都からも1社、参加することになっています。なぜ、これほどまでに遠方や他地域からの参加が広がっているのか、石川県のメンバーに尋ねました。

すると、そこには確かな「学び」があり、その熱量が全国へと波及しているからだといいます。新しい試みに挑む際、最も大切にしているのは「それを自分ごとにできるか」という視点です。一人ひとりが自分ごととして捉えることで、取り組みに圧倒的な熱量が宿ります。

この熱量こそ、「五感」を響き合わせる最も大事なこと――料理の最大の目的であり、なくてはならない「みんなで分かち合いたい」という愛情に似たことかもしれません。

文=松尾泰貴

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