例えば、アーティストとまちこうばを繋ぐ「LIVEISM」プロジェクトでは、工場の廃棄物である「端材」にアーティストが新たな命を吹き込みます。これは、製造現場という「機能的で近い日常」に、アートという「非日常の遠さ」を和える行為です。そのセッションから生まれるアートモニュメントは、どちらか一方だけでは到達し得なかった新しい価値を醸し出します。このように、FactorISMでは、「関わりしろ」をグラデーションのように用意していて、プロジェクトも同時並行で様々。事務局も行政職員から企業経営者や従業員、金融機関職員と幅広いジャンルのメンバーで構成されています。
ARKadeにおいても同じです。信用金庫の堅実さ、行政の公共性、そして友安製作所が持つデザインや遊び心。これらを無理に一つにするのではなく「和える」ことで、尼崎のまちこうばやクリエイター、まちの人たちにとって、最高に居心地が良く、かつ刺激的な「余白」が生み出されるのです。
かつて、尼崎市や八尾市を含む多くの自治体は、地域活性化の旗印として「企業誘致」に心血を注いできました。しかし、2000年代に入り製造コストの削減を追求する中で、中国やASEAN諸国といった新興国に巨大なサプライチェーンが構築されると、大企業による生産拠点の海外移転は加速しました。こうした時代背景において、地域に立地し続ける必然性や、その土地に根ざす独自の意義を見出せない企業は、せっかくの誘致も虚しく、容易に地域を離れてしまうリスクを孕んでいます。特に中堅・中小企業が、その土地に所在し続ける真の価値を再定義することが、今まさに求められているのです。
そこで私が八尾で着手したのは、従来の「企業誘致」という枠組みから、地域企業が自立的に成長する「内発的発展」へのシフトです。
拠点である「みせるばやお」では、地域の企業同士をイベントやプロジェクトで繋ぎ合わせることに注力しました。私が目指したのは、単なる産業支援にとどまらない、「コミュニティ政策こそが最強の産業政策である」というアプローチです。
個別企業の支援を行うだけでなく、企業同士の交流を通じて仲間意識が自然と芽生えるような「仕掛け」をまちの随所に散りばめました。連続講座や1泊2日のフィールドリサーチなど、同じ体験を共有する機会を重ねることで、企業間の壁を取り払っていったのです。


