尼崎の結び目「ARKade」――組織の境界を溶かす新たな挑戦
この「遠さ」を内包しながら共創を生み出すメカニズムを、新たな都市空間で実装する挑戦が始まっています。昨年から私が執行役員を務める友安製作所が深く入り込み、まちづくりに関わっている兵庫県尼崎市の事例です。
尼崎といえば、阪神工業地帯の中心として日本を代表する「ものづくりのまち」でありながら、多様な人々が行き交うカオスな熱量を秘めた都市です。ここで私たちが新たに立ち上げに関わっているオープンイノベーション拠点が「ARKade(アーケード)」です。尼崎信用金庫の支店跡地という、地域の人々の営みが染み付いた空間を活用して作り上げていくこの拠点の名前には、明確な意思が込められています。
A = 尼崎(Amagasaki) R = 関係性づくり(Relationship) K = 結び目を作る(Knot)
つまり、尼崎市における人と人、人と企業、そしてクリエイターなど、多様な存在の「結び目」をつくるための空間です。
ここで特筆すべきは、その運営体制の「異質さ」です。ARKadeは、尼崎市、尼崎商工会議所、アイル(尼崎地域産業活性化機構)、尼崎信用金庫、OIC(オープンイノベーションコア尼崎)、そして私たち友安製作所という、本来であれば役割も文化も「遠い」組織が一体となって運営しています。
行政、金融、支援機関、民間企業という組織の境界線を溶かし、それぞれがコミュニティマネージャーを出し合い、この拠点に常駐する。彼らが「近い」距離で日々膝を突き合わせ、地域企業の内発的発展を直接的に支えていくのです。「支援する側」と「される側」という遠い距離感を撤廃し、同じ釜の飯を食うパートナーとして伴走する。ARKadeは、まさにソーシャルデザインの実験場と言えます。
「和える」技術――形を壊さず、価値を引き立て合う
異なる組織や文化が一つ屋根の下に集まったとき、陥りがちなのが「融合(フュージョン)」の罠です。相手を自分に合わせようとしたり、無理に一つのルールにまとめようとしたりすると、必ず軋轢や分離が生まれます。
共創のメカニズムを説明する際、私はよく「ほうれん草の胡麻和え」を例に出します。ほうれん草と胡麻は、混ざり合ってもそれぞれの形や味を失いません。ミキサーで粉々にするのではなく、それぞれの個性を残したまま、和えることで互いの魅力が引き立つのです。
友安製作所のビジョン「Add Colors to Everyone’s Life」をテーマに、私たちのまちづくり事業課では、一人ひとりの個性(カラー)を尊重し、それを「和える」ことで社会を彩り豊かにすることをめざしています。


