米アーカンソー州のベントビルに2011年に開館、街を一変させた美術館が、この地方都市のアイデンティティをさらに大きく変えようとしている。小売最大手ウォルマートの創業地であり、同社を中心とする都市として知られてきたベントビルには、140haの土地に広がる同社のコーポレートキャンパスがある。
アンディ・ウォーホルやノーマン・ロックウェル、マーク・ロスコなどの作品を所蔵するクリスタル・ブリッジズ・アメリカン・アート美術館が2026年6月6日、開館時と同じサフディ・アーキテクツの設計に基づく拡張工事を終了し、再オープンした。
「世界一裕福な女性」のビジョン
オザーク高原の森林に囲まれた地形を巧みに利用したコーポレートキャンパスは、周辺を流れる数多くの渓流や川、森林、そして野生の環境と見事に調和している。その中にあり、敷地面積を50%約1万平米拡大した美術館はその日と翌日、完成を記念するいくつかのイベントを開催した。
キャンパス内の約54haの敷地に建つ美術館には、新たに3棟のギャラリーが建設された。それらは全長およそ8kmの遊歩道で結ばれている。
屋根に傾斜を持たせたこれらの建物の内部は、天井に向かうに従い外側に傾斜する窓から差し込む光とイエローパイン材を用いた弧を描く黄褐色の梁によって、温かな空間になっている。
この美術館の青写真を描いたのは、ウォルマートの創業者であるサム・ウォルトンのひとり娘、アリス・ウォルトンだ。その保有する資産は推定1340億ドル(約21兆5000億円)。2026年のフォーブス世界長者番付で「世界一裕福な女性」となっている。
15年前の開館以来、この美術館は、文化的に恵まれない地域とされてきたこの小都市に、素晴らしい作品の数々からなるコレクションと、教育プログラムを提供してきた。
「他にはない」キース・ヘリングの展覧会
新設されたギャラリーの1棟では、トーテムやペイントを施したラジカセとスケートボード、衣類、彫刻など、1980年代に活躍したキース・ヘリングの立体的な作品だけを集めた珍しい「Keith Haring in 3D」が開催されている。1963年制作の「ビュイック スペシャル」も展示されている。
美術館によると、特に彫刻家として知られているわけではないヘリングのこの展覧会は、「ヘリングの立体作品にスポットライトを当てた初の展覧会」だという。



