ちなみに、この展覧会には出品されていないヘリングの立体作品の中で、特に注目に値するのは、ドイツのハンブルクで1987年夏に開催された移動遊園地式の現代アート展「ルナ・ルナ(Luna Luna)」に出品されたメリーゴーラウンドだろう。
この遊園地は2023年に「Luna Luna: Forgotten Fantasy」として再現され、ヘリングのほかジャン=ミシェル・バスキア、ロイ・リキテンスタイン、サルバドール・ダリ、デイヴィッド・ホックニーといったアーティストたちのオリジナルの作品とともに、修復され、ロサンゼルスの公園に展示された。
ヘリングのメリーゴーラウウンドは座席部分が馬ではなく、それ以前から描いていたポップアートの「人」を立体化したものになっている。そのほか、(作業用テントなどに張る)タープにポップアートを描いた大型の作品も展示された。
同美術館の学芸担当副館長、オースティン・バロン・ベイリーは、開催中の展覧会で紹介しているヘリングの作品について、「彼のアートを知っていると思っていた人たちにも新鮮な、新たな発見をもたらすでしょう」と述べている。
また、この新しいギャラリーには草間彌生のインスタレーション、「インフィニティ・ミラー・ルーム(無限の鏡の間)」シリーズが展示されている。すでに数々の美術館で、確実に多くの来場者を引き寄せることが証明されているこの作品がヘリングの作品と並べられていることは、驚くことではないだろう。
そのほか、黒い砂と木炭を使い、それらを重ね合わせるようにしてカリブ海地域の深い森を描き出したテレジータ・フェルナンデスの「マニグア(Manigua)」も展示されている。
一方、新設されたギャラリーは、陶芸作品や彫刻の展示スペースとしても使用されることもある橋でつながっており、その隣には、座席数40のカフェ、「Quartz & Honey」が併設されている。カフェの窓からは、およそ2haの庭園、小川、新設された面積約1400平米の池など、自然豊かな景色を眺めることができる。
館内にはそのほか、来場者が陶芸やデジタルアートなどに挑戦することができる専用スタジオや、コミュニティ・ラウンジ、アーティスト・イン・レジデンス・プログラム参加者のための施設などもある。
採用された新たな展示手法
拡張工事に伴い、およそ500年に及ぶアメリカ美術の歴史をほぼ全面的に振り返ることができるコレクションを整理し直したクリスタル・ブリッジズは、それらの展示に関する新たな方向性を打ち出した。
大規模な美術館は伝統的に、収蔵する作品を総合的な視点でまとめ、整理してききた。だが、クリスタル・ブリッジズでは現在、作品はテーマ別に分類・配置され、異なる伝統を受け継ぐ作品や、年代の異なる作品がすぐ近くに並べられている。その「線でつながらない」革新的なアプローチは、すでにその他の美術館でも取り入れられており、大胆な手法だと評されている。


