経営・戦略

2026.06.16 16:15

過去を学んだAIは、未来を変えるスタートアップを見つけられるか

stock.adobe.com

stock.adobe.com

ベンチャーキャピタルの世界は、一握りの企業が経済全体を塗り替えるという信念のもとに成り立っている。しかし今、そうした企業を見つけ出すために投資家たちがますます頼りにしているツールが、皮肉にも彼らの足かせになりつつある。

advertisement

現在、ベンチャーキャピタル企業のおよそ4分の3が、案件評価の支援にAIを使っている。ピッチデック(投資家向け資料)を処理し、競合を精査し、リスクを洗い出す。過去のどんな手法よりも速く、より徹底している。だが、このアプローチには根本的な問題がある。AIは過去のデータで訓練される一方で、産業を塗り替えるスタートアップは、過去に似ていないことがほとんどだからだ。

AIアナリストのバイアス

数十年にわたり、VC投資はおなじみの儀式に沿って進んできた。創業者がピッチデックを提示し、投資家はチームに会い、デューデリジェンスを行う。アドバイザーや業界の専門家を招いて意見を聞く。そうして一緒に、このスタートアップが次のGoogle、Uber、あるいはNVIDIAになり得るのかを考える。あり得ないほどの成功確率を超えて、すべてを変えうる次の企業なのか、と。やがて誰かが、まだ存在しない未来に賭ける。

多くの点で、AIは投資プロセスに対する確かなアップグレードである。投資家はデューデリジェンス資料を貼り付け、「この市場は実在するのか」「競合は誰か」「リスクは何か」「この技術は本当に実現可能なのか」といった問いを投げる。

advertisement

AIは数千本の研究論文、特許、業界レポートを数秒で走査できる。競争環境をマッピングし、規制上の障壁を特定することも可能だ。わずか1年前には想像もできなかった速度で、AIは投資家に自信に満ちた、一見すると網羅的で、驚くほど精通しているように見える分析を提供する。

しかし、AIの強みこそがリスクの始まりでもある。問題は、AIが事実を間違えることではない。事実を正しく押さえることこそ、AIが最も得意とするところだ。このケースでは、おそらく得意すぎるのかもしれない。

大規模言語モデルは、膨大なデータセット全体からパターンを見いだすことで回答を生成する。事実と過去の結果に基づき、最も可能性の高いものを予測するのだ。

この構造は、漸進的な改善を評価するうえでは極めて有用だ。一方で、真のブレークスルーを見抜くことに関しては、はるかに信頼性が低い。

あり得ないことが必然になるとき

歴史は何度も示してきた。最も変革的な企業の多くは、登場した当初はあり得ない存在に見えた。

2008年にAirbnbが投資家に提案した際、多くは、見知らぬ人が旅行者に自宅の部屋を貸すという考えを退けた。だが今日、同社の価値は数百億ドルに上り、世界のホスピタリティ市場を塗り替えた。

1980年代初頭、パソコン市場は小さく断片的だった。当時のデータで訓練されたモデルは、PCが趣味人やエンジニア向けのニッチな道具にとどまると結論づけても不思議ではない。

インターネット黎明期には、個人情報をインターネットに預けることを信じる人は少なかった。プライバシーへの懸念が世論を支配していた。当時のセンチメント(世論動向)を分析するシステムは、ユーザーが自分の社会生活をオンラインに自発的にアップロードすることは決してない、と結論づけたかもしれない。

それでもMicrosoftやFacebookのような企業は、まさにそうした結論が外れたことの上に築かれた。

ブレークスルーは定義上、それまでの延長には見えない。よくて時期尚早、悪ければ不可能に見える。

そしてそれこそ、よく調整されたAIシステムが、そうしたものについておそらく言いそうなことでもある。

これは欠陥ではなく、むしろAIの特性だ。既存の証拠に根差した説明を高く評価するように設計されている。

既知の市場に関する仮説を検証するのにAIが有用なのは、まさにこのためである。同時に、確立された市場を変革しようとする企業を評価するうえでは信頼できないのも、このためだ。

エネルギー:次のパラダイムシフト

エネルギー分野は、この力学をはっきりと示している。

例えば、小型モジュール炉(SMR)を開発するスタートアップをAIが評価するとしよう。歴史的記録には、建設期間と規制上の障壁が、数年から数十年に及ぶことが示されている。スリーマイル島。チェルノブイリ。福島。さらに、1950年代にさかのぼる商用化の失敗の長いリストもある。

しかし、その歴史が必ずしも未来を示すとは限らない。小型モジュール炉は、過去の大型で個別設計の原子力発電所とは本質的に異なる。メーカーは工場で製造し、標準化してスケールさせることを前提に設計している。

経済性も変化した。AIデータセンターは、膨大で途切れのない信頼性の高い電力を必要とする。NVIDIA、Microsoft、Google、Amazonといった企業は、すでに原子力発電に結びつく契約を結び、投資を行っている。

AIシステムは、繰り返し、しかも高コストで失敗してきた技術として捉える可能性が高い。一方、何が変わったのかを理解する人間の投資家は、ついに時機が到来した技術として見るかもしれない。

外れ値を見つける

優れたスタートアップは、最初はしばしば非合理に見える。まだ十分に具現化していない行動変容や技術的飛躍に依存しているからだ。既存のパターンを確認するのではなく、新しいパターンを生み出す。

投資家が機会のスクリーニング(選別)にAIをますます依存するなら、意図せずポートフォリオを、今日の市場の延長にあるより安全な賭けへと傾けてしまうかもしれない。だがそれは、世代を定義するイノベーションの外れ値を見つけ、そこに賭けることとは、別の提案であり、別のゲームである。

だからといって、投資家がAIの利用を避けるべきだという意味ではない。AIはすでに不可欠なリサーチツールになっている。産業のマッピング、技術の分析、ビジネスモデルのストレステスト(耐性検証)ができる。うまく使えば、デューデリジェンスをより速く、より厳密にする。

課題は、AIにできることとできないことを意識することだ。

AIは、世界が今のままであるという前提のもとで、そのスタートアップが筋が通るかどうかを教えてくれる。だが、未来が過去から決定的に分岐する瞬間を認識することは、信頼性高くはできない。世界が変わり、そのスタートアップが必要になるような変化が迫っているのかどうかを、AIは教えられない。

その判断には、AIが持たないものが依然として必要だ。人間の想像力である。

そしてベンチャーキャピタルにとって、想像力は今後も、最も重要なシグナルであり続けるかもしれない。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事