2026年6月5日、午後2時40分、「エヌビディア」CEOのジェンスン・フアン(黄仁勳)は、韓国の金浦空港に降り立った直後、真っ先にソウル市麻浦区の弘大(ホンデ)エリアのネットカフェ(PCバン)へと足を運んだ。
店の名は「T1ベースキャンプ」。韓国最強のeスポーツチーム、T1が運営するコミュニティ施設だ。店の外では約500人のファンが押し寄せ、EDMの音楽が鳴り響くなか、エヌビディアのCEOはゆっくりと人波をかき分けていった。まるでK-POPアイドルの登場のようだった。
PCバンの奥でジェンスン・フアンを待っていたのは、リーグ・オブ・レジェンド(LoL)史上最多6度の世界制覇を誇り、「LoL皇帝」と称されるイ・サンヒョク、ゲーム名「Faker(フェイカー)」だった。
韓国プロスポーツ史上初めて国家スポーツ最高栄誉賞を受賞したeスポーツの「生ける伝説」と、時価総額約5兆ドル(約730兆円)を誇るAI半導体企業の頂点に立つ男がそこで向き合った。
エヌビディアのフアンCEOが、フェイカーのパソコン環境を尋ねると、「RTX4070を使っている」という答えが返ってきた。
すかさずフアンCEOは会場に向けて言い放った、「それは骨董品だ」と。そして、両者サイン入りのパソコン用のグラフィックスカード「GeForce RTX 5090」を、その場で抽選し、観客にプレゼントした。
「これは世界に1枚しかない。100万ドルの価値があるかもしれない」とフアンCEOは言って、会場に集まった人たちに向かってウィンクした。
一方、フェイカーは自分のユニフォームにサインしてフアンCEOに贈った。退場前にフアンCEOはフェイカーに向かって「1日何時間練習するのか」と尋ねる。「10時間です」という答えに、フアンCEOは深くうなずいた。
AI産業の巨人とeスポーツのレジェンドが、同じ熱量でゲームを語る。この場面は、フアンCEOの韓国訪問が、単なるビジネストリップではないことを深く印象づけた。



