アジア

2026.06.17 15:15

「エヌビディア」フアンCEOを焼肉店で歓待の裏にある韓国財界の経済的必然

gguy - stock.adobe.com

フアンCEO熱狂の根底にある経済的必然

日本のビジネス慣行に慣れた目には、前出のような韓国財閥のトップが煙の立ち込める大衆食堂に並んで座る光景は意外に映るかもしれない。しかし、この演出には二重の意味がある。

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1つは「庶民との距離感ゼロ」の表明だ。サムギョプサルもチキンも、韓国では学生でも気軽に食べられる日常食だ。そこへ財閥会長が現れることで、「私たちは遠い存在ではない」というシグナルを社会全体に送る。

もう1つは「フアンCEOへの敬意の返し方」だ。彼が格式ばった場所よりも庶民的な店を好むことは世界に知れ渡っており、韓国側もそれに合わせることで「対等な友人」を演じる、それはプロトコルではなく、文化的な共鳴なのだ。

2025年10月のAPECサミット時は、サムスン電子会長のイ・ジェヨン氏と現代自動車グループ会長の鄭義宣氏が、フアンCEOと江南の鶏肉専門店「カンブチキン」で会食。この「カンブ会同」は、ドラマ『イカゲーム』で有名になった無二の親友を意味する「カンブ」から命名されている。

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7カ月後の今回は、弘大の庶民的焼き肉店へ。舞台は変われども、「威張らない姿勢」というメッセージは一貫している。

このフアンCEOに対する熱狂の根底には、純粋な経済的必然がある。エヌビディアのAI半導体が威力を発揮するには「HBM(高帯域幅メモリ)」が不可欠だ。このHBMを量産できる企業は世界にサムスン電子とSKハイニックス、米マイクロンの3社しかなく、生産量の1位と2位は韓国企業が占めている。

エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが繰り返し韓国を訪れるのは、AIサプライチェーンの核心が、この国に集中しているからだ。

2025年10月には、25万枚超のエヌビディア製GPUを韓国のAIインフラに投入する協定が結ばれた。今回の訪韓では「フィジカルAI」(ロボットや自動運転など現実世界へ踏み出すAI)が主要なテーマとなり、世界屈指の製造業基盤を持つ韓国は最良の実装パートナーとして位置づけられている。

フアンCEOが食事をした店、手に取ったもの、立ち寄った場所など、すべてがSNS上にリアルタイムで拡散し、主に若者を中心に「追体験」を求めた人たちがその場所に向かった。

バナナ味牛乳、チョコパイ、サムギョプサル、フェイカーとのポーズ写真。「ジェンスン・フアンがやったことを自分もやってみる」という連鎖が、ソーシャルメディアの上で静かに、しかし確実に広がった。

このように韓国の若者がフアンCEOに熱狂する理由は、2つあると思われる。

1つ目は、彼が韓国企業を重要なパートナーシップだと言い、優秀な企業であると持ち上げてくれること。これにより韓国という国を誇らしく思うことができる。

2つ目は、台湾系アメリカ人である移民者出身の人間が世界最高のAI企業をリードする創業者になったということである。韓国の財界はすでに財閥に支配されていて、裸一貫でのしあがることが難しい社会になっている。だが、世界ではフアンCEOのようになれるという希望が見えるということだ。

このようにジェンスン・フアンCEOの今回の滞在は、韓国の人たちを熱狂させ、多くのファンを生みだした。

文=アン・ヨンヒ

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