韓国財界のトップたちと焼肉店で会食
その夜、場面は弘大駅近くの焼き肉店「ヒョンニムジョヨ」へと移る。フアンCEO を囲んで、SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長やLGグループの具光謨(ク・グァンモ)会長、NAVERの李海進(イ・ヘジン)会長という韓国の財閥やテック企業のトップたちが顔を揃え、鉄板で豚バラ(サムギョプサル)を焼いた。
その場にいた他の客の分まで食事代を払ったのはNAVERの李会長で、同社が提供する顔認証決済サービス「NAVERペイ」を使った。「AI時代の精算」ともいえるこのシーンも大きな話題を呼んだ。
店を出た後、財界のトップたちは外で待つ人たちへプレゼントを手渡した。そのなかにあったのは、フアンCEO CEOのお気に入りとして知られるビングレ社の「バナナ味牛乳」、オリオン社の「チョコパイ」、パルド社の「ビラクシッケ(伝統甘酒)」、そしてSKハイニックスとコンビニチェーン「セブン-イレブン」が共同開発した「HBMチップス」だった。
HBMチップスの「HBM」とは、エヌビディアのAI半導体に欠かせない「高帯域幅メモリ(High Bandwidth Memory)」の略称でもある。SKハイニックスはエヌビディアへのHBMの最大供給会社。その半導体の名を冠したスナック菓子が人々に配られるという、ビジネスとユーモアが交差する演出は、韓国らしいセンスと言えよう。
SNS上では「HBMを食べた」という投稿が相次いだ。
実は、前出のバナナ味牛乳とフアンCEOの縁は今回が初めてではない。2025年10月の来韓時、彼が「カンブチキン」の前で「バナナ牛乳(商品名)」を市民に手渡す映像がSNS上で拡散。製造元のビングレ社は株価が3パーセント超上昇し、急遽、無料配布イベントを開催した。
韓国では1974年の発売以来、50年以上にわたり国民的飲料として愛されてきたこのバナナ味牛乳は、この1本の動画をきっかけにグローバルな注目を浴びることになった。
今回、ジェンスン・フアンCEOの来韓と前後して、韓国では「ジェンスン・フアンの足取り」という専用追跡サイトも立ち上がり、8万人以上が訪れた。
サイトには彼が立ち寄る予定地点の地図と時系列、そしてエヌビディア関連銘柄のリアルタイム株価が表示された。
また、フアンCEOとフェイカーとの「出会い」に刺激されて、「ドゥサンロボティクス」や「ロボスター」の株が52週高値を更新した。
これに対し、ブルームバーグは、フアンCEOの個別銘柄への強気発言を「無謀で市場の実態から乖離している」と警鐘を鳴らした。
一方、韓国の若い世代は、SNS上でフアンCEOを「メクジャラル(食通)」というニックネームをつけた。「食べることをよく知っている人」を指す韓国語スラングだ。
サムギョプサル、チキン、バナナ味牛乳、参鶏湯(サムゲタン)、ヌテラ入りタイ焼き(プンオッパン)など、今回の来韓で彼が口にしたものは何でもSNS上で瞬時に拡散し、翌日には店に行列ができた。


