グーグルと、その親会社であるアルファベットは、人工知能(AI)革命の中心にいる。だが、両社のCEOを務めるスンダー・ピチャイは、米国時間6月14日にスタンフォード大学で行った卒業式の祝辞で、AIが今日の働き方をどう変えつつあるのかについて、一切触れなかった。スタンフォード大学はAI研究をリードする存在だ。
「私が学んだ助言の中で最も時代を超えて通用するのは、特定の技術に左右されないものです」とピチャイは述べた。ピチャイは17億ドル(約2722億円)の純資産を持ち、フォーブスの「2026年版世界長者番付」に名を連ねている。「それは皆さん自身のこと、皆さんが自分のためにどんな人生を築きたいのか、そしてその人生を追い求めるためにどんな選択をするのか、という話です」。
卒業式で他の登壇者がこのAI技術を持ち上げた際にはブーイングが起きていたが、ピチャイはそれを免れた。もっとも、彼のスピーチの最中には、グーグルとイスラエル政府との結びつきや、同社が米国政府と結んだ物議を醸す契約に抗議して、学生たちが退場していた。
ピチャイは、こうした批判に答えることも、AIに何ができ何ができないかについて予測を示すこともしなかった。その代わりに卒業生へ語ったのは、インド出身の貧しいスタンフォード大学院生から、今日では世界で最も価値があり影響力のあるテクノロジー企業の1つを率いる立場へと上り詰める中で、自身が「間違った判断よりも正しい判断を多く下す」助けとなった3つの原則だった。
楽観を選べ
ピチャイは、今日の若いビジネスパーソンが、世界各地の紛争、経済不安、テクノロジーをめぐる大きな変化など、多くの課題に直面していることを認めた。「日々のニュースを見ると、私たちはかつてないほど困難な時代に生きていると思いがちです」とピチャイは述べた。だが彼は、どの世代もそれぞれに苦難を抱えてきたのであり、最も大切なのはそれにどう向き合うかだと論じた。
ピチャイは「私たちは、卒業後に踏み出す世界を選ぶことはできません。しかし、自分たちの置かれた状況をどう受け止めるかは選ぶことができます」と語った。
ピチャイは、インドからカリフォルニアに到着したときの話を紹介した。受け入れホストの前で、スタンフォードを囲む丘が茶色に見えると言ったところ、その人は穏やかに言い直し、「私たちはそれを黄金色と呼ぶことにしています」と言ったという。
ピチャイにとって、この小さな言い換えは、物事の見方や、前向きな面に目を向けることについての大きな教訓となった。同氏によれば、この視点はその後、挫折を乗り越える助けになった。その挫折には、早く仕事に就く必要があったため、スタンフォードで博士課程を続けるのをやめ、代わりに修士号を取得したことも含まれる。



