スポーツ

2026.06.16 07:00

2026年W杯:科学が作り上げた「3カ国16の完璧なサッカー場」はどう誕生したか

Charlotte Wilson/Getty Images

W杯を支える芝生の科学

FIFAが資金を提供する数百万ドル規模の研究プロジェクトの一環として、研究者たちはさまざまな品種の芝生を調査し、最も優れたパフォーマンスを発揮するものを特定した。そして、W杯の各開催都市の気温に合わせて調合した特注の混合種子を芝生農家に提供した。さらに、芝生はFIFAの厳格な基準を満たすために、特定の高さまで育てる必要もあった。

advertisement

研究者たちは、植物の生育に欠かせない太陽光が遮られる屋内スタジアムでどのように芝生を育てるかという課題にも取り組んだ。FIFAがテネシー大学内に建設した遮光構造物を使ってデータを集め、屋内スタジアムの環境を忠実に再現して実験を行ったのだ。

また、シアトルのルーメン・フィールドをはじめとする8つのスタジアムでは、W杯に向けた転換作業において人工芝の上に天然芝を敷き詰めるという手段を取ったが、その最適な工法についても研究を重ねた。さらに、3Dプリンターで作製した足と足首の模型にサッカーのスパイクを履かせた機械を使い、選手の激しい動きを再現して、スパイクが天然芝とどのように噛み合うかをテストした。

「表舞台からは見えないが、芝生をこのレベルで機能させるために、非常に多くのテクノロジーが投入されている」と、ソロチャンはインタビューで語った。彼の研究は、スポーツ競技場やゴルフ場、その他多くの人が行き交う場所において、芝生のパフォーマンスを最適化することに特化している。

advertisement

「あまりの衝撃に開いた口が塞がらないほどだったが、同時にとても興奮した」

FIFAのシニアピッチマネジメントマネージャーを務めるアラン・ファーガソンが、壮大な提案を携えて初めてソロチャンにアプローチしたのは2019年のことだった。ある推計によれば世界人口の5分の1が視聴するというこの大舞台のために、ファーガソンは史上初めて、科学的根拠に基づいた完璧なピッチを作り上げたいと考えたのだ。

「あまりの衝撃に開いた口が塞がらないほどだったが、同時にとても興奮した」とソロチャンは振り返る。

ソロチャンはプロジェクトへの参画を決めるとすぐに、ミシガン州立大学の学生だった頃の恩師であるロジャーズに共同首席研究員としての協力を仰いだ。2人はこの大規模プロジェクトのために、それぞれの大学から学部生や大学院生、さらには研究助手や技術者を総動員した。

ロジャーズは、移動可能な仮設フィールドを実現するためのシステム開発に貢献したことで知られる人物だ。1994年のW杯では、彼とソロチャンがタッグを組み、ミシガン州のポンティアック・シルバードームに仮設の屋内天然芝ピッチを設置することに成功している。

次ページ > 2026年W杯のフィールドは、単に芝生を並べただけのものではない

翻訳=江津拓哉

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事