在庫の戻りは緩やかでも、価格の下値は保たれる
在庫の再構築は少なくとも夏の残りの期間は緩やかになるだろうが、戦前の水準に達する必要はない。戦前の水準はかなり高かったが、その多くは制裁対象の原油がタンカーに積まれた状態だった。在庫はパンデミック後の水準をまだ上回っている。政府備蓄は再構築が必要だが、おそらく供給が再び過剰になるまで先送りされるだろう(経済的に合理的な政府であればの話だが)。
加えて、在庫に対する価格の反応には大きな違いがある。それはトレンドなのか、それとも水準なのかということだ。つまり、低水準でも増加傾向にある在庫は弱気材料となり得る。特に増加が継続する兆候があればなおさらだ。海峡が開いたままであれば、今後数カ月はそのような状況になるだろう。とはいえ、低水準だが上昇中の在庫は高値を支えないかもしれないが、再び潤沢になるまでは下値を支えるはずだ。それには数カ月かかる。
原油価格はトレーダーの期待で動き、変動が続く
最後に、原油価格の動きを分析する際には、価格がファンダメンタルズではなくトレーダーの期待によって動かされることを忘れてはならない。
期待はファンダメンタルズの影響を受ける。ただこの局面では、トレーダーが合意は維持され海峡も開いたままだと考えるなら、彼らはあらゆる兆候に注目する。すなわち、どれだけの原油が流れているか(ほぼリアルタイムのデータ)だけでなく、今後どれだけ流れる可能性が高いかを示す兆候だ。合意が不安定だったり、船会社が慎重だったりすれば、価格は再び上向き得る。しかし、船の安全性に十分満足していると船会社が総じて表明するなら、価格はほとんど動かないかもしれない。
したがって原油価格は、テヘランとワシントンからのあらゆる発言、(不)遵守に関する苦情、レバノンにおける双方の軍事行動、海峡でのタンカーへの攻撃や脅威の報告に反応し、変動しやすい状態が続きそうだ。しかし特に、湾岸で生産されている原油の量と、そこを出るタンカーの数に関する証拠に反応するはずだ。光明は見えてきたが、まだ危機を脱したわけではない。


