経済・社会

2026.06.16 11:45

国家情報局の誕生、世界のスパイと肩を並べられるのか

BillionPhotos.com - Stock.adobe.com

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政府のインテリジェンス(情報収集・分析)機能の強化に向け、司令塔の「国家情報会議」と、実務を担う「国家情報局」を設置する関連法が5月27日、成立した。国家情報局はまもなく、内閣情報調査室を格上げする格好で、700人規模の体制で発足するという。

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国家情報局長は内閣情報調査室を率いる内閣情報官よりランクアップされる。情報機能を持つ各省庁の調整・仕切り役として、情報機関にありがちな「縦割り主義」の解消がある程度期待できそうだ。

一方、国家情報局は米国家情報長官室と異なり、自らも情報収集と分析を行うという。政府当局者によれば、内閣情報調査室の要員は500人以下だが、増員する人材の選抜はまだこれからだという。元々、警察が主体で防衛や外務などが人材を派遣している。内閣衛星情報センターとも連携しているほか、米中央情報局(CIA)や韓国国家情報院とも情報交換している。では、国家情報局にCIAや国情院並みの「活躍」が期待できるのか。

計18の機関を抱える米国の情報力は抜きんでてはいる。最近では、ベネズエラのマドゥロ大統領夫妻の拉致や、イスラエルと協力したイランの最高指導者ハメネイ師の殺害が記憶に新しい。常に移動する人間の位置の把握は極めて難しい。衛星や通信、無人機(ドローン)などによる情報も重要だが、最後は協力者による通報が決め手になる。

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米国の抜きんでた情報力は、同盟国である日本に対しても外圧や交渉力の強化に使われてきた。外務省元幹部によれば、1980年代から90年代の日米貿易摩擦による交渉の際、日本側の交渉カードが漏れている気配がたびたびあったという。

2007年9月、イスラエル軍がシリア東部に建設中だった原子炉を空爆して破壊した。クリストファー・ヒル元米国務次官補によれば、同氏は空爆直後、北京で北朝鮮の金桂寛外務次官〔当時〕に一枚の写真を見せた。北朝鮮の寧辺核関連施設で働く技術者と、シリアの技術者が車の前で撮った写真だった。写真には、シリアが建設していた原子炉付近の通行許可証が貼り付けてあった。ヒル氏は後に「我々に見つけられないものはないということを思い知らせたかった」と語った。

日本政府当局者は米国の抜きんでた情報能力について「豊富な装備とネットワークから導き出される」と語る。防衛省の資料などによれば、米国は少なくとも偵察や測位、早期警戒、通信などの情報衛星を100機以上運用しているとされる。情報収集衛星とデータ中継衛星の10機体制を目指す日本とでは、情報収集能力に大きな開きがある。衛星の解像度も、商用衛星並みの日本とは比べものにならない。CIAの要員数は機密扱いだが、2万人余を数えるとされる。

また、米国は英、豪、カナダ、ニュージーランドとともに、アングロサクソン系5カ国の秘密情報ネットワーク「ファイブアイズ」が運用する「エシュロン」と呼ばれるシステムを使いこなす。集めた膨大な電子情報を分析し、特定の言葉を使う送受信者などを絞り込み、情報収集や監視活動につなげていると言われる。エシュロン加入には、秘密の保護が必要だが、「旧ソ連は冷戦時代、日本をスパイ天国と呼んでいた」(米マサチューセッツ工科大学のリチャード・サミュエルズ教授)という。

一方、そんな米国にも問題がないわけではない。トランプ米大統領は2日、ビル・パルト連邦住宅金融局長を国家情報長官代行に指名した。米メディアによれば、パルト氏は住宅ローン記録などを調べ上げ、トランプ氏の政敵に対する攻撃に利用してきたとされる。共和党を含む議会の猛反発を受け、トランプ氏は11日、国家情報長官に、ニューヨーク州南部地区連邦検事のジェイ・クレイトン氏を起用する方針を明らかにした。

とりあえず、高市早苗首相ができることと言えば、国家情報局などの情報機関を政治利用しない覚悟を持つことだろう。

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文=牧野愛博

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