サイエンス

2026.06.19 18:00

人はなぜ「嘘」をつくのか? 脳科学が解明した生存戦略と心の理論

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自分が最近ついた「罪のない嘘」に、必要以上の罪悪感を抱く前に知っておきたい事実がある。欺くという行為は、人類の誕生よりもはるかに古くから存在してきた。それは哺乳類の誕生や、神経系の発達よりも前の時代から存在するのだ。

2016年に学術誌『Biological Reviews』に掲載されたレビュー論文は、生命の系統樹にまたがる欺きの驚くべき広がりを整理している。宿主を操って餌を与えさせるためにアリの化学信号を模倣するチョウの幼虫、餌となるものを装って獲物を誘い込む捕食者、何も還元せず協力的なコロニーにただ乗りする細菌の変異体などが挙げられている。

「欺き」を最も根源的な意味で捉えれば、それは生物が自らの利益のために、別の相手に誤った信念を抱かせたり誤った反応を引き起こしたりするための戦略にすぎない。ここで重要なのは、道徳的な観点ではなく構造的な観点だ。生物学者が欺きを研究するとき、彼らが見ているのは「選択圧(淘汰圧)」だ。つまり、うまく機能するがゆえに世代を超えて生物を形作る力である。シグナルの発信者と受信者の利害が対立する環境では、受信者を操作できる発信者が優位に立つため、それは存続する。そして時間が経つにつれ、その優位は積み重なっていく。

それが全面的な混乱へと暴走しないのは、進化的な対抗力があるからだ。欺きが有効であるためには、正直さがベースラインでなければならない。病的な嘘つきばかりの世界では、どんなシグナルも情報を伝えず、誰もが損をする。実際、欺きと検知の「進化的軍拡競走」(敵対する生物種が相手の適応や進化に対抗して自らも進化を続ける共進化プロセス)が存在する。双方が信号を送る/読み取るためのより洗練された道具を進化させ、不正行為は「常に存在するが管理された例外」として、基本的には正直なシステムの中に組み込まれる。人間は、この例外を最も精巧な極限まで押し広げた種である。

嘘をつくとき、脳の内部で何が起きているのか

嘘は認知的コスト(人間が情報を理解して判断を下すまでに脳が消費するエネルギー、認知負荷)が高い。これは20年にわたる神経画像研究を通して得られた、より洗練された知見の1つである。欺きは一貫して、真実を語るよりも脳に大きな負荷をかけており、その証拠は測定可能だ。神経心理学分野の学術誌『Neuropsychologia』に掲載された、22本のfMRI(機能的磁気共鳴画像法)研究と計416人の参加者のデータを統合した定量的メタ分析では、脳の前頭前皮質や前帯状皮質、島皮質、側頭頭頂接合部など、欺きの際に活性化する広範な領域ネットワークが見いだされた。

とりわけ前頭前皮質はほぼすべての研究で取り上げられるが、それには理由がある。そこは実行機能の中枢であり、計画や抑制、ワーキングメモリ、社会的予測の役割を担う。嘘はこれら全ての機能を同時に働かせる必要があり、嘘をつくとき、人間は次の行為を行わなければならない。

1. 真実の反応を抑制する
2. 真実の代わりに述べる別のストーリーを組み立てる
3. その説明が内的に整合しているか確認する
4. 聞き手が何を信じそうかをモデル化する

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