サイエンス

2026.06.21 18:00

人類はたった「1種類の食べ物」だけで生き続けられるのか? 雑食に進化した理由

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単一食物だけを食べる人の腸内細菌叢に起きること

人間の腸内には、実に約100兆個の微生物細胞が息づいている。これは、人体そのものの細胞の数に匹敵する、あるいは上回るほどの数だ。

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細菌や古細菌、菌類、ウイルスからなるこの微生物の生態系(腸内細菌叢)は、宿主であるヒトにとっては、積極的な代謝のパートナーだ。これらは人体の細胞では作れない化合物の生成、炎症の抑制、免疫反応の形成といった役割を担っている。さらには「脳腸軸」を通じて、気分にも影響を与えているとされている。

『British Journal of Nutrition』に掲載された2014年の研究では、単一のものとしては腸内細菌叢の構成に最も大きな影響を与える外因性の要素として、長期的な食生活を挙げている。

短期的な食生活の変化が腸内細菌叢に及ぼす影響は、それほど大きくなく、一時的なものだ。しかし、長期的に単一の食物を取る食生活は、腸内細菌叢の様相を根本から塗り替える可能性がある。

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多様な植物性の食物繊維が多く含まれた食生活は、善玉菌の増殖を促進し、短鎖脂肪酸の生成を高める。短鎖脂肪酸とは、酪酸などの化合物であり、腸管バリアの完全性を正常な状態に保ち、全身性の炎症を抑え、健康的な代謝をサポートする役割を担っている。

こうした多様性が失われると、腸内環境は「ディス・バイオーシス(dysbiosis)」に陥る。これは、腸内細菌叢の多様性が低下して病原性細菌が増加した状態で、肥満や2型糖尿病、炎症性大腸炎といったさまざまな疾患のリスクが高まる負のスパイラルを招く。

単一の食物だけを取り続ける食生活は、どの食物を選ぶかに関係なく、ほぼ必然的にこの状態を招く。卵やサーモンといった、多様な食生活においては非常に優れた選択肢になる栄養豊富な食物であっても、腸内細菌叢の多様性を維持するために必要な、幅広い食物繊維やポリフェノール、プレバイオティクス(消化されずに大腸まで届き、大腸に棲む微生物の増殖を促進する成分)を供給することはできない。

腸は、人が食べるものから栄養を得ているが、それだけでなく、腸内細菌叢の構成は、人が口にするものの多様さによって形作られているのだ。

単品ダイエットは、生物学的には「百害あって一利なし」

われわれヒトは、最も正確な「生物学的な意味」において、未完成の生物だ。ヒトの進化は、旧石器時代でストップしたわけではなく、遺伝的適応は、食生活の変化に対応する形で、その後も続いてきた。

しかし今や、文化的な食生活の変化は、遺伝子レベルの適応をはるかに上回るペースで進んでいる。言い換えればわれわれは、進化が予想だにしなかった食物環境を生き抜いている生物だが、この遺伝子と環境のミスマッチは、生理学上のコストという形で現実に現れている。

今の世の中にあふれるさまざまな食事法が、どれだけ体のことを思って考案されたものだとしても、科学的に厳密に検証するべきであるのは、この問題があるからだ。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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