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2026.06.15 15:15

成長する企業がミッションを見失う本当の理由

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エリック・リースは新著Incorruptible: Why Good Companies Go Bad and How Great Companies Stay Greatで、企業が自らを見失うのは、財務的な圧力がかかった瞬間に価値観を守り抜くことができないからだと論じている。フィンテックとAIの領域では、その圧力がかつてないほど高まっている。

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「拙著『The Lean Startup』は、素早くつくり、スケールし、巨大な価値を生み出すための道具を創業者たちの世代に与えた」と彼は書く。「だが、その先に何が起きるかを見通せなかった。守るに値するもののつくり方は教えたが、それを守る方法は教えなかったのだ」

2011年に刊行された『The Lean Startup』は200万部超を売り、30以上の言語に翻訳された。同書が提示した概念──MVP(実用最小限の製品)、ピボット、検証による学習、構築・計測・学習──はビジネスの主流語彙として定着し、Yコンビネーターでは必読書となった。いまリースが語るのは、その次に来るものだ。いかに速く成長するかではなく、成長しながらいかにコミットし続けるか。AIが産業と経済を作り替え得る力となりつつある今、これ以上ないタイミングだ。

中核となる考え方

企業がミッションを裏切るのは、創業者が邪悪だからではない。変化はたいてい、もっと緩慢だ──ここで一度妥協し、あそこで成長目標を優先し、新たな投資家の期待に応え、次の市場サイクルに合わせる。やがて外から見れば会社は同じ姿に見えるのに、内側では何かが変わってしまう。

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リースはその背後にある力を「財務的重力」と呼ぶ。株主の期待、短期的なインセンティブ、次の資金調達ラウンドの論理によって、組織を徐々に価値観から引き離していく構造的な圧力のことだ。

「避けがたいもの、単に『そういう仕組みだ』と感じられるものは、実のところ自分より大きな何かが残す重力の航跡にすぎない」

財務的重力とは、多くの企業がつくられる過程に組み込まれた設計上の欠陥だ、とリースは書く。取締役会の場で、自分でもそれが間違っていると分かっていながら同意してしまった経験を、少なくとも一度は持つ創業者も多いだろう。

企業が成功すると、投資家はそこから最大の価値を引き出したくなる。「金のガチョウが黄金であるほど」とリースは書く。「それを屠りたい誘惑は強くなる」。その過程で、価値を生んだ当のものが消えてしまうことがある。

AIと暗号資産におけるミッション

過去10年で暗号資産は、決済、ICO、DeFi、NFT、メタバースプラットフォーム、実世界資産(RWA)、無数の「死んだ」トークン、そしてAIとの統合へと移り変わってきた。各サイクルに合わせて自社の立ち位置を変えた企業も少なくない。一貫した哲学を内側に保ちながら適応した企業もあれば、資本が別の場所へ動くたびに社名を変えることを覚えた企業もある。

そのパターンはAIでも加速している。「AIファースト」は、かつての「ブロックチェーン搭載」と同じになりかねない──哲学というより、資本を呼び込むための戦略になってしまうということだ。多くの企業は、次のラウンドに最適化されたデラウェア州の定型的な定款を採用し、投資家に安心感を与え株主リターンを最大化するための取締役会を設計している。財務的重力が働くとき、拠り所となるものは往々にして乏しい。

2004年、グーグルはIPO申請書に「Don't be evil(邪悪になるな)」と書き込んだ。だが2018年までに、その文言は行動規範から完全に消えた。同時期、同社は国防総省のAI契約に署名し、技術の使われ方をめぐって従業員のストライキにも直面していた。

2023年、OpenAIの取締役会は自社のCEOを解任した。定款には明記されていた。「我々の第一の受託者責任は、人類に対して負うものである」。取締役会には法的な権限があった──OpenAIは非営利で、所有者は存在せず、取締役会はまさに、いかなる個人の利害よりもミッションを守るために設けられていた。だが、それは1週間ももたなかった。数十億ドルを投資していたマイクロソフトからの圧力と、ほぼ全面的な従業員の反発が、アルトマンの復帰を強いた。2年後、OpenAIは非営利の構造を完全に放棄し、営利企業へと転換した。

こうした転換が長期的に両社にとってどう作用するのかは、まだ分からない。

良いピボットと悪いピボット

新興テクノロジーでは、立ち位置を変える圧力が止むことはない。市場は動き、トークンは暴落し、モデルは改善し、資本は次の物語を追いかける。複数のサイクルを生き残る創業者は、正しい理由で動く者たちだ。

リースはCloudflareを例に挙げる。同社は当初、ファイアウォールの事業として始まった。2年ほど経ったころ、あるエンジニアが昼食の席でこう言ったという。「こんなにも『より良いインターネット』を本気でつくることに貢献できていると感じる職場は初めてだ」。創業者たちはそれを自分たちの真のミッションだと理解し、コミットした。その後、最も収益性の高いプレミアム機能の1つ──SSL暗号化──を無償提供した。暗号化されたインターネットのほうが、より良いインターネットだと信じたからである。コンバージョン率は下がった。だが彼らは動じなかった。

現在もCloudflareは、世界のウェブトラフィックのおよそ20%を処理している。このピボットは、企業が何を重んじるかを変えたのではなく、それを明確にしたのだ。

ピボットが常態化した世界で問われるのは、そのピボットがミッションへ近づくのか、それとも遠ざかるのかだ。後者であれば、それはおそらく悪いピボットである。

偉大さを保つ

リースの答えは、圧力が到来する前に、ミッション保護を会社の仕組みに組み込むことだ。中核となるアイデアは、彼が「困難であるほど容易になる」と呼ぶものだ。圧力下で原則を守り抜くほど、信頼は複利で積み上がり、企業は時間とともにいっそう価値ある存在になっていく。

真にミッションと整合している企業は、長く生き残るだけでなく、しばしば高い成果を上げる。

Costco:1987年以降のリターンは2万8070%(S&P 500は877%)。

Costcoの会員更新率:毎年90%。

Devoted Health:あらゆる接点の後に測定する会員の信頼スコアは94%。

Cloudflare:1年で1000の募集枠に対し、応募者は150万人。

Costcoは1985年以来、ホットドッグのコンボを1.50ドルに据え置いてきた。その過程で、自社の製造工場を建設し、サプライチェーンの一部を垂直統合し、会員との約束を破らないために炭酸飲料の仕入れ先さえ切り替えた。2008年のインフレ急騰期にCOOが値上げを提案したとき、CEOのジム・シネガルの返答は社内伝説となった。「ホットドッグの値段を上げやがったら、お前を殺す。何とかしろ」

Incorruptibleは、適応と誠実さの緊張関係を解消するものではない。だが現代テクノロジーの中心にある問いを投げかける。すべてが変わる中で、何を固定したままにすべきなのか。たとえ望んでも誰も改変できないスマートコントラクトのように、決して触れてはならない価値とは何か。

AIが日常生活に組み込まれ、企業がこれまで以上に速いスピードで意思決定を行うようになる中で、これらの問いは重要性を増している。

forbes.com 原文

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