リーダーシップ

2026.06.15 12:32

AI時代のイノベーションに必要な「企業代謝」の変革

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Google DeepMindを率い、AlphaFoldのブレークスルーでノーベル賞を受賞したデミス・ハサビスは最近、これから起きることを「産業革命の10倍のインパクトが、10倍のスピードで」やってくる、と表現した。産業革命は1世紀にわたって進行した。AIが可能にする変革は10年に圧縮されつつある。これはテクノロジーに関する予測ではない。あらゆる企業、あらゆる労働力、あらゆるオペレーティングモデルについての予測である。

アンディ・グローブは著書『インテル戦略転換』の中で、この種の局面を戦略的転換点(strategic inflection points)と呼んだ。競争ルールが根本から変わる一方で、既存企業がなお旧来のルールの下で動き続けているほどの、根本的なシフトである。AIはその瞬間の1つだ。そして多くの企業は、それに対応できるようにはつくられていない。マッキンゼーの最新「State of AI」レポートは、そのギャップを単一の対比で示している。年初時点で組織の88%が少なくとも1つの業務機能でAIを使用していた一方、全社規模で拡大できていると答えたのは約3分の1にとどまり、意味のある財務インパクトを捉える高業績企業に該当したのは約6%だった。テクノロジーはスケールした。企業側の対応は、スケールしていない。

多くの企業が想定していた「代謝」は、もはや環境に合致しない

大企業は、断続的な変化に対応するよう設計されてきた。大きな技術シフトは数年に一度到来し、企業はそれを構造化されたプログラムで吸収し、実行は18〜36カ月にわたって進む。このモデルが機能したのは、いったん選択した基盤能力が安定していたからである。計画し、整合を取り、構築し、スケールさせる時間があった。システムが消化する時間があった。

Executive Technology Boardで私たちが学んだのは、AIがそのパターンを破るということだ。能力が安定していない。プログラムの実行中にも、その下で能力が変化する。1月に書いたロードマップは、7月には一部が陳腐化している。ガバナンスモデルは、意思決定がなされ実装されるまでの間、世界が十分長く静止していることを前提にしている。しかし、もはやそうではない。基盤能力が四半期ごとにリセットされる環境では、遅い意思決定サイクルが生むのは単なる遅延より悪い結果である。意思決定がなされ構築が終わる頃には、つくっているものが往々にして、もはや正しいものではなくなっている。

慎重に見える選択が、より安全であることはまれだ

転換点は、躊躇を罰する。待つことは保守的な一手のように感じられる。だからこそ多くの大企業は、それをデフォルトにしてしまう。しかし、基盤能力が四半期ごとに変化し、競合がオペレーティングモデルをリアルタイムで作り替えている局面で、待つことは慎重さではない。無防備さである。遅れて動く企業は遅れたままになりがちだ。先行企業が築いた優位が、その後の競争ルールを形づくるからである。

取締役会とCEOは、直感的にそれを理解している。問題は、大企業の内部にあるほぼすべてが、その逆方向へ押し戻すことだ。ガバナンスは減速するようにつくられている。リスクの枠組みは、上振れを取りにいくより損失回避に偏る。年次計画は、俊敏性より予測可能性に報いる。いま最も困難なリーダーシップの仕事は、大企業のデフォルト行動がこの局面を「遅すぎる速度」で通過しようとすることを見抜く点にある。構造が待つことを有利にしている。リーダーの役割は、その引力を能動的に打ち消すことだ。

資金配分、決定権、ガバナンスはいずれも、別の速度で動く必要がある

問題は野心ではない。私が一緒に仕事をしている多くのCEOと取締役会は、AIに対して意欲的だ。問題は組織設計である。誰が実験を承認できるのか。資源はどれだけ速く動くのか。ある展開(デプロイ)から得た学びが次の展開にどれだけ速く反映されるのか。これらは機構上の問いであり、いまこの局面において、多くの大企業の答えは間違っている。

変えるべき領域は3つある。資金配分はよりダイナミックであるべきだ。年次サイクルで12カ月単位に意思決定を固定するのではなく、証拠(エビデンス)が現れるにつれて資本を再配分できる、より小さく速いメカニズムが必要になる。決定権は仕事の現場に近づける必要がある。事前に明確なガードレールを定義し、事業リーダーが一歩ごとに蒸し返しをせずに行動できるようにする。そしてガバナンスそのものも、門番(ゲートキーピング)からモニタリングへと移行する必要がある。AIのアウトプットはドリフトし、本番環境では挙動が変化するからだ。リスクは一度評価して終わり、管理するものではない。継続的に評価しなければならない。

ジェフ・ベゾスが10年前の株主向け書簡で示したタイプ1とタイプ2の意思決定の区別は、こうした全体の下にある重要な運用原則を捉えている。タイプ1の意思決定は重大で不可逆であり、慎重な熟慮を要する「一方通行のドア」だ。タイプ2の意思決定は可逆で、誤りだと判明した場合には取り消せる「双方向のドア」である。ベゾスは、組織が大きくなるほど、多くの意思決定に重厚なタイプ1のプロセスを適用しがちであり、明らかにタイプ2であるものまで含めてしまう結果、鈍重さと考えの浅いリスク回避を生む、と指摘した。今日、多くの企業でAIをめぐって起きているのはまさにこれだ。本来タイプ2である意思決定が、タイプ1のガバナンスを経由してしまう。必要なのは、どの意思決定が一方通行のドアを通るのかを特定してそれらを慎重に統治し、それ以外は双方向のドアを通してより速く進めることだ。

AIの速度でのイノベーションは、テクノロジー課題ではなくマネジメント課題だ

より健全な代謝には、いくつか一貫した特徴がある。意思決定のループは短く、四半期ではなく週単位で回る。事業リーダーは、ワークフローの再設計、導入、価値創出のオーナーとなり、テクノロジープロジェクトの受け身のスポンサーではなくなる。リスクと法務は、後から相談される存在ではなく、仕事に埋め込まれる。事前承認済みのパターンが再利用され、新たなユースケースのたびに過去のあらゆる問いを再び開き直すことがなくなる。実際の評価インフラが継続的に問題を検知し、年次監査が遅れて発見するのではない。

これらは必ずしも新しいことではない。パターンは存在し、私が関わる小規模なAIネイティブ企業、そして意図的に高速で動けるよう設計された大企業の一部にも見て取れる。ただしそれらは、切り出し(carve-outs)や新規事業の立ち上げとして現れることが多い。多くのケースで欠けているのは、こうしたパターンに合わせてより広いオペレーティングモデルを再設計するという確信であり、変わらない構造にいくつかの実践を接ぎ木することではない。

先行している企業は、単にAIの導入が速いだけではない。統制を失うことなく、企業がより速く学び、決め、適応できるように自らを再設計している。テクノロジーの選択も重要だが、それは下流の話である。上流にある選択とは、取締役会とCEOがいま迫られている問いだ。すなわち、環境が要求する速度で意思決定し、資金配分し、統治できるよう、企業の仕組みをどう設計するかである。

自社において、一方通行のドアと双方向のドアを意図的に区別できているだろうか。そしてその明確さは、組織全体に浸透しているだろうか。現時点では、企業の代謝ギャップは真剣に注視すべきだと私は感じている。そして、それに対処するための猶予は、多くの取締役会が想定するより短い。

forbes.com 原文

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