箱根の温泉宿に泊まり、札幌でスキーを楽しむ。カービィ好きの下の息子のためにカービィカフェへ、ギターを弾く上の息子とは御茶ノ水の楽器街へ。Agoda CEOのオムリ・モーゲンシュテルンは毎年のように家族で日本を訪れる。「ほぼ日本の常連客」と自称する親日家だ。
その彼が率いる会社は2025年、ほかならぬここ日本でつまずいた。Agoda経由で予約した部屋がホテルに確保されていない。休館日の宿に客が到着する。星野リゾートの星野佳路代表がSNSで名指しの注意喚起を行い、東横インも自社サイトで警告を出した。観光庁は3月に業務改善を申し入れ、7月には運営会社幹部に直接改善を求めた。訪日消費額9兆4549億円(2025年、過去最高)の観光大国日本で、そのインフラを担うグローバルOTA(Online Travel Agent)が信頼を失いかけた。
Agodaは、Booking Holdings(時価総額約1250億ドル、2026年6月時点)が「アジア太平洋圏の主力」と位置づけるブランドであり、日本は最重要市場の一つだ。騒動の後、初めて来日したモーゲンシュテルンがForbes JAPANの取材に応じた。アジアに賭けたAgodaは、日本で生き返るのか。
なぜ「予約した部屋」が消えたのか
Agodaのサイトには、ホテルや旅館と直接契約して仕入れた部屋のほかに、外部の業者(サードパーティ・サプライヤー)から仕入れた部屋も並んでいる。トラブルの舞台は後者だった。一部の業者が、実際には確保していない部屋や、施設が販売を認めていない部屋を掲載していたと報じられている。客が予約と決済を済ませても、肝心のホテルには予約が存在しない。掲載情報が施設の実態と切り離されているため、休館日の宿まで売られるケースもあった。
この構図を、モーゲンシュテルンは自らの言葉で認めた。
「問題の多くはB2Bの仕入れ側から発生しました。サードパーティのサプライヤーの一部が、日本市場で事業を行うのに必要な品質レベルに達していなかった。直接仕入れる場合は通常問題ありません」
2025年7月の公式声明で同社は「特定の第三者サプライヤー経由の在庫の取り扱いを停止した」と発表したが、原因の構造までは踏み込んでいなかった。トップが自らの言葉で問題の「根」を認めたのは、今回が初めてだ。
対応について、モーゲンシュテルンはこう説明した。日本市場に特化した品質目標を新たに設け、中間業者との契約を厳格化した。基準を満たせない業者は停止し、改善すれば再開も認める。問題の兆候を事前に察知するモニタリングシステムにも投資した、と。「在庫を削減せざるを得ませんでしたが、大部分は維持できました」
モーゲンシュテルンは「パートナーがオペレーションを改善できるよう支援し、そのうえで在庫を提供した」と説明し、結果として星野リゾートや東横インとの間に「新たな機会」が生まれたと述べた。かつてAgodaを名指しで批判した企業との関係を「信頼回復の証」と位置づけた。その「新たな機会」が具体的に何を意味するのかは明かされなかったが、少なくとも再び一歩を踏み出しているようだ。



