第三者在庫を安心なものにする
モーゲンシュテルンは自社の戦略を3つの層で説明する。第一にテクノロジー、第二に価格、第三にローカライゼーションだ。
テクノロジーに関しては、同氏の面目躍如。イスラエルのテック企業Qlikaの共同創業者としてオンラインマーケティングに特化。Agodaの親会社Booking .comによる買収でAgodaのテクノロジー部門を牽引、そしてCEOへ。巨大OTA企業の頭脳として最も重要視するのがテクノロジーだ。それは第2、第3の層でも土台となる。
鍵となるのは第2層だ。Agoda(母体Booking .com含む)の予約に呼応する全ての在庫は同社の「巨大なマーケットプレイス」上にある。これはAgodaの直仕入れとサードパーティが持つ情報の集合体だ。一般的には「直仕入れ」の方が価格は安いとされるが、繁忙期や地域性による価格差、ベッドバンクなど大手の在庫取り扱い企業との比較で、第三者在庫が安いことが多い。
「消費者に最良の価格を提供することに執着しています。サードパーティの在庫を持つのはそのためです。他のどこよりも良い価格を持っているからです」。最安値の追求こそが、第三者在庫を抱え続ける理由だ。
そして第三層はビジネスを成立させる基本的な考え方を包括する。第三層のローカライゼーションを語るとき、モーゲンシュテルンの言葉に最も力がこもった。「日本にいなければならない。日本的でなければならない。そうでなければ消費者は信頼してくれません。コストがかかっても、より複雑になっても、よりローカルに、より信頼されるようになれば、それは利益になる」。Agodaは日本で「第一種旅行業者」として登録し旅行業法の下で営業している。外資系OTAでは希だ。より日本的になるため、これは「特権であり学びの機会」だという。
ローカルへのこだわりは、パートナー戦略にも表れる。「日本のような市場を考えてみてください。非常に多くの施設、旅館、伝統的な宿があります。国際企業との取引に必ずしも慣れているわけではありません」。だからJTB、楽天、じゃらんといった国内大手プレイヤーとも組む。「私たちはパートナーが海外旅行者を理解し、つながる手助けをし、パートナーは私たちがその市場を理解する手助けをしてくれます」。ロイヤリティポイントで予約したい層など、自社だけでは届かない顧客にもパートナー経由でリーチできる。騒動はB2Bの仕入れ側で起きたが、B2Bは同時に、外資のAgodaが日本に「根」を張るための回路でもある。
在庫品質の管理と、価格への執着。この綱引きを抱えたまま走るのが、Agodaという事業の構造だ。


