選択肢が増えるほど不安が増す理由
マイアミ大学で会計学の学士号取得を目指すZ世代のジョセフ・アンドリューは、同世代よりも経済に楽観的だと語る。「テクノロジーが切り開いた機会は、過去に存在したものよりはるかに広がっている。ソーシャルメディアを開くたびに、ニッチなビジネスでとんでもなく裕福になった人の新しい例が目に入る。Z世代は、自分たちがどれほど恵まれているかを過小評価している。しかし、持ち家だけはまだ手に入らない唯一のものなので、そこに過度に意識が集中してしまうのだ」
しかし無限の機会に目を向けることは、Z世代にさらに強い不安をもたらす可能性がある。哲学者でYouTuberのマイケル・バーンズによれば、Z世代の経済不安は、キルケゴールが「無限の不安」と呼んだものだという。「有限の選択肢しかないときにも不安は生まれるが、最悪の不安は無限の不安だ。すべてが潜在的に可能だと知ることによって生じる」
Z世代はいかに住宅政策を変えるか
若者の多くが30代後半まで賃借人であり続けるにつれ、バーンズは、Z世代が努力を借家人の権利擁護に注ぐようになると考えている。入居者主導の住宅、そして中間層向けの公営住宅の拡充である。
この潮流は、リベラルで生活費の高い都市ですでに勢いを増している。マムダニ市長は、怠慢で搾取的な家主からニューヨークの入居者を守ることを選挙の主要争点に据えた。シアトル市は最近、中心部の150戸のアパート建物を取得し、市場家賃と補助家賃の双方を支払う世帯(中所得・低所得)を居住させる計画を立てている。また、同市のソーシャルハウジング開発主体を通じて、1800戸の住宅を取得・開発する計画もある。
より多くの若者が「将来の住宅購入者」ではなく「賃借人」として自らを認識するようになれば、他の都市も追随する可能性がある。直感に反して、賃貸をより手頃にすることは、長期的にはZ世代の住宅所有率を高めることにもつながり得る。頭金の貯蓄がより現実的になるからだ。
アメリカンドリームの再定義には、より多様な住宅選択肢が必要だ
大きな芝生と白い柵のある一戸建てを所有するというアメリカンドリームが、若者にとって従来の意味を失うにつれ、住宅所有は、Z世代が再定義する「成功」に沿った新たな意味を帯びていく。
成功がコミュニティを意味するなら、集合住宅(複数世帯が住む建物)を所有することは、友人や家族に住まいを提供する方法となる。成功が芸術的表現を意味するなら、持ち家とは、転売価値を気にせず、自分の好みに合わせて装飾や改修を施すことかもしれない。成功が都市生活の享受を意味するなら、郊外の一戸建てよりも、公共交通機関に近い分譲マンションのほうが望ましくなるだろう。
若い世代は、こうした新たな道を実現可能にするよう政策立案者に求めなければならない。そのためには、人々を手の届かない単一路線に閉じ込める一戸建て専用の用途地域規制を撤廃する必要がある。戸建て、二世帯住宅、離れ、分譲マンション、賃貸マンション・アパートなど、単身者にも家族にも適した規模の住宅選択肢を増やし、若者が自分なりのアメリカンドリームを達成する手段を得られるようにすべきである。


