ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が平然と言い放った驚くべき発言に、ロシアの軍事評論家たちが憤慨している。ロシア軍が5月末にウクライナ方面に発射したオレシュニク中距離弾道ミサイル(IRBM)について、プーチンは軍事目標を狙ったものではなかったと主張した。
プーチンは6月4日、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムの一環で開かれた国際報道機関などの代表との会合で、今回のオレシュニク発射は実験場で行うような実用試験にすぎなかったと説明し、軍事目標は攻撃せず、ミサイルが命中したのは「納屋」だったと述べた。弾頭の着弾地点をドローン(無人機)で確認するのに都合のよい地点を選んだと主張し、こうした確認作業は将来の攻撃を計画するうえで重要だなどとも語った。
意図的に軍事目標を外したという主張は、ロシアの新たな「超兵器」がやらかした目立つ失敗を体よくごまかそうとする試みに映る。
ロシアの「神兵器」オレシュニク
SF的な兵器のなかでも、いわゆる「神の杖(Rods from God)」ほど軍事技術オタクを魅了してやまないものは少ない。1950年代に米国のシンクタンクによって提案されたこの構想は、軌道上から高密度の金属棒を落下させ、地表の目標を攻撃するというものだ。材料の金属としては、鋼鉄の約2倍の密度をもち、大気圏再突入時の熱にもより強いタングステンが有望とみられている。金属棒はマッハ10以上の速度で軌道から離脱していき、落下する小惑星のように衝撃力のみで損害を与える。その圧倒的な速度と運動エネルギーゆえに、この種の兵器を迎撃するのはほぼ不可能と考えられている。
2000年代に米空軍が行った研究では、9tの超高速軌道兵器が地上に激突すると、深さ約30mのクレーターが形成され、少なくとも半径約300m以内にある建造物はすべて破壊されると推定されていた。米空軍向けに提案されたさらに大型の兵器では、その効果は4kt(キロトン)級核弾頭に匹敵するとされた。
これらの研究で想定された兵器は、あらかじめ軌道上に配備し、必要時に地上へ落下させるというものだった。より単純な方法としては、強力な弾道ミサイルによって弾頭を高高度に打ち上げ、そこから巨大な運動エネルギーを伴って降下させるというものがある。こうした構想を検討した研究は数多くあり、それには米国の「プロンプト・グローバル・ストライク(地球規模迅速打撃)」計画の一環で、核弾頭を搭載するトライデント潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を通常弾頭の地中貫通兵器(バンカーバスター)に転用する案も含まれる。



