筆者は、CNBCに掲載されたマシュー・チン氏の記事(米国時間6月12日付)を、公開当日に目を通していた。チンは最近の数多くの出来事を書き留め、世間の感情と実際の行動を対比させたうえで、反発がAI開発を実質的に止めることはないだろうと繰り返し論じていた。いくつかの一節を抜き出してみよう。
「だが、世間の反発が高まっているにもかかわらず、世界のAI利用は記録的な高水準にまで急増している」
これは起きたことを報じているだけだ。だが、次のような記述も続く。
「Anthropicと国防総省の確執のような個別の事例では、ユーザーの倫理的な判断がAnthropicの利用を後押しした面はあるかもしれない。だが、AI利用全体の大きな流れが世間の感情によって変わる可能性は低い、とアナリストたちは指摘する」
チンは論拠として、あるアナリストの実名を挙げ、その発言を引用している。
「『AI導入の力強い流れには、減速の兆しはまったく見られない』と、ボストン・コンサルティング・グループのAI・技術チームBCG Xのマネージング・ディレクターでパートナーのハンノ・シュテークマンは語った」
これが補強する主張の一つだ。その後、チンはこう書いている。
「AIが日常生活全般でますます中心的な役割を果たすようになるなか、世間の感情が悪化したとしても、全体の利用者数にはほとんど影響しないだろう」
続いてチンは、ある調査を引き合いに出し、GPTの節目となる数字を算出したまさにその会社、Sensor Towerのエイブ・ユセフの次の発言を引用している。
「『AIに対する否定的な感情……が高まっているのは紛れもない事実だが、消費者はこうしたプラットフォームをますます利用し、頼るようになっている』」
あえて原文を長く引用したのは、一人の読者として筆者が受けた強いインパクトと、その説得力のある論調をそのまま伝えたかったからだ。説得力があり、胸に迫る。そして、こう考えずにはいられない。人は、AIが入り込むこの領域で、とりわけ職場で、本当に自分の進む道を自分で選べるのだろうかと。
われわれはLLM、あるいはその次に来るものを使うことになる
ちなみに、懸念を抱く人は、AIに頼りすぎないための手引きを得ることができる。著者は、Forbes寄稿者である同僚ソル・ラシディの書いたある記事が気に入っている。そこには「好奇心を持ち続ける」「依存を抑える」、そして著者個人のお気に入りであり、いずれにせよ誰もが実践すべき「振り返りを習慣にする」といった箇条書きのヒントが盛り込まれている。
著者は、ボストンや、スイスのダボスといった場所、そして世界各地で、AIに関する多くの会議に出席している。MITコミュニティの一員を代表する立場として、実に多くの声を耳にする。AIについて、唯一無二の答えや、定まった一本の道筋があるとは思わない。だが、世間の感情という問題は大きい。
エージェント型AIの時代、そしてAGI(汎用人工知能)や超知能が間近に迫るなかで、人間であるとはどういうことかをもっと突き詰めて理解する必要がある、という認識が広がりつつある。なぜなら、どうやらわれわれ全員が、LLM、あるいはその次に来るものを使うことになるのだから。


