2002年のスペースX創業から世界一の富豪へ
マスクは四半世紀以上にわたり、この記録に向けて歩みを進めてきた。2002年にスペースXを創業したが、同年、eBayはペイパルを15億ドル(約2400億円)で買収した。ペイパルは2000年に、マスクが共同設立したオンライン銀行X.comと合併していた。マスクはその後、テスラ創業の翌年である2004年に投資家兼会長として参画し、のちに共同創業者の称号を得た。2008年にはテスラのCEOに就任。同年、スペースXは民間で開発されたロケットとして初めて軌道投入に成功した。テスラは2010年にナスダックに上場し、マスクは2年後、推定資産20億ドル(約3200億円)でフォーブスの年次「世界長者番付」に初登場、世界で634番目の富豪となった。
わずか9年で世界一、首位攻防の末2024年に独走
そこからマスクは猛烈なスピードで富豪ランキングを駆け上がった。テスラ株が約1万3000%急騰し、2021年1月にはベゾスを抜いて初めて世界一の富豪となるまでに要したのはわずか9年だった。その後、マスクとベゾスが1年の大半で順位を入れ替えたのち、テスラ株のさらなる急騰により、マスクは2021年11月に史上初めて資産3000億ドル(約48兆円)に達した。しかし、期限を迎えるストックオプションに伴う税負担を賄うため、また2022年4月に発表したツイッターの敵対的買収(440億ドル[約7.04兆円])資金の確保を助けるために、テスラ株の保有分を400億ドル(約6.4兆円)近く売却し、株価を急落させた。
マスクは2022年12月、仏高級ブランド大手LVMHのベルナール・アルノーに首位を明け渡した。テスラ株の不安定な値動きに伴いマスクの資産も揺れ、両者は2023年の大半と2024年前半にかけて首位の座を争った。
マスクが首位を決定的に奪還したのは2024年6月であり、その後は一気に突き放した。以前は考えられなかった資産額の節目を短期間で次々に達成したのである。2024年12月には史上初の資産4000億ドル(約64兆円)に到達し、10月に5000億ドル(約80兆円)、9月に6000億ドル(約96兆円)と7000億ドル(約112兆円)、2月に8000億ドル(約128兆円)に達した。12月に過去最高値を付けたテスラ株の反発や、無効とされていたテスラの巨額ストックオプション(現在の価値は1160億ドル[約18.56兆円])を復活させたデラウェア州最高裁の判断が、これらの到達に寄与している。しかし、マスクの最も価値の高い資産となったスペースXの評価額の急騰こそが、マスクの急激な上昇に最大の役割を果たしてきた。
2021年以来評価額約2100%上昇──2025年は純損失約7840億円
スペースXの評価額は2021年、非公開のセカンダリー取引で初めて1000億ドル(約16兆円)を超えて以来、約2100%上昇した。これは、同社が2025年に売上高187億ドル(約2.99兆円)に対して純損失49億ドル(約7840億円)を計上したにもかかわらずである。スペースXは、急成長する衛星ネットワーク「スターリンク」と、火星の植民地化、宇宙でAI向けの太陽光発電データセンターを建設するという野心的計画により、公開市場の投資家を引きつけたい考えだ。
疑問の声はあるものの、マスクと支援者は割安と見る
スペースXの極めて高い評価額を支えるファンダメンタルズには疑問の声も多いが、マスクと主要支援者の多くは「割安だ」と見ている。バロン・キャピタルの億万長者投資家ロン・バロンは今月、Xに投稿された動画インタビューで「10兆ドル[約1600兆円]、20兆ドル[約3200兆円]、あるいは30兆ドル[約4800兆円]の価値になると考えている」と述べた。「会社の中では、私の見立ては控えめすぎると思っている人もいる」。
動画に対するマスクのコメントはこうだ。「ロンは賢い」。


