ビジネス

2015.11.04

サンフランシスコ 市内全域にIoT専用回線を導入

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フィットネス・トラッカーには、専用の無線ネットワークが必要なのだろうか?フランスのスタートアップ、Sigfoxの答えは、「YES」だ。

AT&TやVerizonなどのキャリアはIoT(“Internet Of Things” モノのインターネット)について語るのを好む。テック業界のバズワードとなったIoTとは、世の中のあらゆるモノをインターネットにつなげる技術のことだ。しかし、従来のセルラーモデムでは電力消費が大きいため、スマートデバイスには低消費電力な通信手段が必要だ。

そこで、Sigfoxは、低パワーで扱うデータ量が小さいスマートデバイスを何百万台も接続することに特化した無線ネットワークを開発した。フランスのトゥールーズに本拠を置く同社のネットワークは、既にフランスとスペインのほぼ全土をカバーしている。

現在、Sigfoxはアメリカ進出を強化している。同社は、10月27日に行われたイベントで、サンフランシスコ全域をカバーするネットワークを敷設したと発表した。2016年の第1四半期までに全米10都市(サンフランシスコ、ニューヨーク、ボストン、ロサンゼルス、シカゴ、オースティン、ヒューストン、アトランタ、ダラス、サンノゼ)にエリアを拡大する予定だという。同社はアメリカでの統括拠点をボストンに置き、元HPの幹部のアレン・プロイシスが北米地域プレジデントとして指揮をとっている。

サンフランシスコでの事業展開に当たり、Sigfoxはサンフランシスコ市の協力を得て、ブリーフケース程度の大きさの基地局を市内の建物の屋上に約20台配備した。同社の超低速ネットワークが伝送するのは、12バイトのメッセージ程度のデータで、動画ストリーミングなどの大きなデータ伝送には向かない。Sigfoxのネットワークは、パーキングメーターや火災報知器、農地の湿度センサー、ウェアラブルなど、電話以外のあらゆるデバイスをインターネットに接続するのに適している。ヨーロッパでは、スウェーデンの大手警備会社Securitasが、ホームセキュリティ用の監視機器をSigfoxのネットワークに接続している。アメリカでの最初の展開事例は、スマートメーターのメーカーであるGlen Canyonとの提携になる予定だ。

Sigfoxによると、同社のワイヤレスネットワークを敷設する費用は、携帯電話網を構築するのに比べてはるかに安いという。また、アメリカでは、免許が不要な900MHzの周波数帯を利用している。同社でコミュニケーション担当の上級副社長を務めるトーマス・ニコルズは、7月のフォーブスとのインタビューで、従来のセルラーネットワークであればカリフォルニア州全域をカバーするのに約20,000のマイクロセルが必要だが、Sigfoxであれば1,500で済むと述べている。ニコルズによると、スペイン全域をカバーするのに要した期間は、僅か12ヶ月だったいう。その秘密は、既存の基地局の所有者と提携したり、既製のハードウェアを使う同社独自の手法にある。特定の地域で一定の規模に達した後、1デバイス当たり年額1ドルでSigfoxのネットワークを利用できるようにするというのが同社の考えだ。

デバイスメーカーは、2ドルもしないチップと、Sigfoxのファームウェアをデバイスに搭載する必要がある。テキサス・インスツルメンツやシリコン・ラボラトリーズなどの半導体メーカーがSigfoxのチップを販売している。また、Sigfoxの株主でもあるサムソンは、IoT向けチップ「Artik」に、Sigfox の接続技術を採用した。

サムソンは、スペインの大手通信事業者であるテレフォニカと合わせて、Sigfoxに1億5,000万ドル(約180億円)以上を出資している。
既存の移動体通信事業者もIoT市場への参入を図っているが、Sigfoxは彼らとの提携にもビジネスチャンスがあると見ている。例えば、AT&Tは、2016年末までに2G の周波数帯での通信を廃止する予定だが、同社の2Gサービスを利用しているデバイスの数は多い。仮にAT&TがSigfoxと組めば、サービスを継続することが可能だ。「アメリカのキャリアは、まだ我々のことを理解しようとしている」とSigfoxのプロイシスは話す。

文=アーロン・ティリー(Forbes)/翻訳編集=上田裕資

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