ビジネス

2026.06.15 09:30

OpenAIとアンソロピックのAIトークン値下げ競争、チップ需要とインフラ層を揺さぶるか

Ascannio - stock.adobe.com

トークン値下げはAI業界をどう直撃するか

トークンの値下げはすでに始まっており、今後さらに続く可能性がある。Anthropicは2025年11月のOpus 4.5発表時にClaude Opusの価格を67%引き下げ、OpenAIはすでに50%割引の「Flex」処理を提供している。

advertisement

こうしたAIコスト最適化エージェントを導入する企業は、AnthropicとOpenAIによるトークン値下げに圧力をかけているとみられる。

たとえば、不具合を特定する新興企業のDetailは、WSJによれば「同社の作業負荷の90%を、ClaudeとグーグルのGeminiから、独自モデルと、中国で開発されたモデル群であるGLMに移した」という。WSJはさらに、Anthropicが最近投入したFable 5モデルが「トークン単価でDeepSeekのV4 Proの50倍を超える」と伝えた。

もっとも、企業は安価なモデルを本格導入する前に試している。Detail創業者のダン・ロビンソンはWSJに「うまく機能し、エンジニアたちが気に入るものが見つかれば、それを費用対効果の高い形にする方法を見つける」と語った。さらに「オープンウェイトのラボからは今、選びきれないほど優れた成果が次々と生まれている」と続けた。

advertisement

今後の値下げ幅は不明だが、AI業界のバリューチェーン全体に及ぼすダメージは大きなものになりうる。具体的には次の通りだ。

可能性(1):AIチャットボットの利益率が低下

AIチップ提供企業によるコスト削減──エヌビディアによれば、同社のBlackwellと数値フォーマット「NVFP4」の組み合わせは100万トークン当たりのコストを75%減の5セント(約8円)まで引き下げた──にもかかわらず、利益率はさらに下がる恐れがある。Anthropicはすでに、グーグルとアマゾンのサーバー上での推論(学習済みAIモデルを実行する処理)コストを理由に、粗利益率の予測を40%に引き下げている

可能性(2):エヌビディアの市場シェアが低下

トークン価格の下落を生き延びるには、AIチャットボット事業者はトークン当たりのコストを大幅に削減しなければならない。調査会社TrendForceによれば、2030年までにカスタムチップがAIサーバーの40%を稼働させるようになり、その成長速度はGPUの約3倍に達する。グーグルのTPU、AWSのTrainium、マイクロソフトのMaia、メタのMTIAといったカスタムチップは、エヌビディアのGPUに比べて推論コストを30〜50%削減できる。

可能性(3):ネオクラウドの債務リスクが高まる

モルガン・スタンレーによれば、総額3兆ドル(約480兆円)のAI設備投資のうち、最大3000億ドル(約48兆円)が社債で賄われる見通しだ。トークン価格が下落すれば、ネオクラウド(AI特化型の新興クラウド事業者)の収入は減りかねない。一方で債務の返済額は固定されているため、資金繰りはいっそう厳しくなる恐れがある。

ヤフー・ファイナンスによれば、CoreWeaveは総額290億ドル(約4.64兆円)の負債を抱え、うち97億ドル(約1.55兆円)が12カ月以内に返済期限を迎えるうえ、シニア債には9.75%の金利を支払っている。また法律事務所Quinn Emanuelによれば、オラクルは現在1300億ドル(約20.8兆円)超の負債に加え、2480億ドル(約39.68兆円)のリース債務を抱えている。

投資家が注視すべき2つのシナリオ

今後の展開は2つ考えられる。トークン価格の下落が消費を一段と押し上げるシナリオと、AIの低調なROIを理由に企業が支出を絞り込むシナリオだ。

トークンの価格競争は、OpenAIとAnthropicの企業評価額を押し下げる要因になりうる。それでも消費が増え続ければ、チップ需要がエヌビディアから「トークン当たりコスト最安」を武器とするカスタムシリコン企業へと移る中でも、AI設備投資は拡大を続ける可能性がある。逆に需要が落ち込めば、もともと薄いAIチャットボットの利益率はさらに縮小し、7000億ドル(約112兆円)規模のAIデータセンター建設は収益源の確保を一段と急ぐことになり、返済原資をトークン収入に依存する1兆ドル(約160兆円)規模の債務の山が、借り手と貸し手の双方をより大きなリスクにさらすことになるだろう。

(forbes.com 原文)

翻訳=酒匂寛

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事