価格下落の中でトークン需要は急増
トークン市場は巨大で、なおも成長を続けている。ただしこの成長の背景には、価格の急落が需要を加速させているという構図がある。ガートナーによれば、AIモデルへの支出は2025年の155億ドル(約2.48兆円)から2026年には326億ドル(約5.22兆円)へと、ほぼ倍増する見通しだ。中でもAnthropicの成長は際立っている。調査会社Sacraによれば、同社の2026年第1四半期の年換算売上高は450億ドル(約7.2兆円)と、2025年末時点の約90億ドル(約1.44兆円)から5倍に増加した。
トークン需要の伸びがあまりに速いため、値下げが増収に与える打撃は限定的で、むしろ需要をさらに喚起する可能性すらある。ゴールドマン・サックスの調査部門は、トークン消費量が2030年までに24倍の月間12京トークンに達すると予測しており、チップメーカーが年間のトークンコストを60〜70%引き下げていると指摘する。
つまり、トークン単価の下落を背景に、使用量の増加が支出の増加を2倍のペースで上回っているのだ。決済管理プラットフォームのRampによれば、2025年1月から2026年4月にかけて、企業のトークン使用量は1001%増加した一方、支出の増加は497%にとどまった。
膨らみ続けるAI予算──だがROIは依然伴わず
多くの企業にとってAIは採算が取れておらず、中でもエージェント型AI(自律的にタスクを遂行するAI)の浪費ぶりが目立つ。FinOps Foundation(フィンオプス・ファウンデーション)は、エージェント型AIが「タスクごとに数十回もトークンを消費する呼び出しを行う」ため、4月の時点で企業はすでに年間トークン予算の3倍を使い切っていたと指摘した。問題はほかにもある。ワークデイの調査によれば、AIが10時間分の作業を省くごとに、従業員はその出力の手直しに4時間近くを費やしているという。
個人レベルでは最大5倍という大幅な生産性向上が見られるものの、生成AIのROI(投資利益率)はいまだ見えてこない。Writerの2026年企業調査によれば、生成AIから大きなROIを得ている組織はわずか29%、エージェントに至っては23%にすぎない。
より楽観的な見方を示すのがボストン コンサルティング グループ(BCG)だ。同社は2025年の売上高の25%がAI関連サービスによるものだと主張する。BCGの「AI Radar」によれば、いわゆる「AIビジョナリー」企業は出遅れ企業の1.7倍の増収を達成しており、2026年のリターンが期待外れに終わってもAI投資を削減すると答えた経営幹部はわずか6%にとどまり、人間の労働を本格的に代替できるエージェント型ワークフローも実現に向かいつつあるという。


