「スペースXの話を聞くのはもううんざりだ」。そう語るのは、運用資産24億ドル(約3840億円。1ドル=160円換算)の登録投資顧問会社Focused Wealth Managementのマネージングディレクター、フィリップ・デアンジェロだ。そう言って彼は笑う。「顧客から質問がたくさん来ている」。
個人投資家に約30%、需要は発行株の4倍
多くの投資家にとって、これは単なるIPOではない。世界で最も注目される未公開企業の1社に投資できる稀有な機会なのだ。スペースXはIPO株式の約30%を個人投資家に配分するとしている。個人投資家に回る配分が通常5%から10%であることを踏まえると、これは大幅に高い水準だ。投資家はスペースXの話をしているだけではない。列をなしているのだ。報道によれば、この公募への需要は発行予定株式数の約4倍に達したという(編注:米国時間6月11日現在)。
これは取引初日に大きな値上がりにつながり得る。その結果、一般投資家の中には早期売却の誘惑に駆られる者も出てくるだろう。そしてその際、あまり知られていないウォール街のルールに直面する可能性がある。多くの証券会社は「IPOフリッピング」(短期転売)、すなわち配分された株式を取引開始直後に売却する行為を抑制するため、将来の公募へのアクセスを制限している。
政府の規則はなく証券会社が独自に制限
「政府のルールはない」。こう語るのは、フロリダ大学ユージン・ブリガム金融・保険・不動産学部でIPOイニシアチブのディレクターを務めるジェイ・リッターだ。代わりに証券会社が独自の方針を採用してきた。IPOを取り仕切るウォール街の銀行は、取引開始後も需要が強い状態であることを望むからだ。初日に売りが殺到すれば株価が押し下げられ、IPOが成功しなかったように見えてしまう。
「顧客がフリッピングするという評判が立てば、将来の案件で引受会社からIPO株を確保するのが難しくなる」とリッターは言う。
言い換えれば、証券会社には引受会社の機嫌を損ねないようにするビジネス上の理由がある。人気IPOへのアクセスは、顧客の獲得と維持に役立つ。顧客の多くが新規発行株をすぐに投げ売りすれば、次の注目案件で株式を確保しにくくなる可能性がある。



