Stripe、Visa、Mastercardが共同ステーブルコインプラットフォームの立ち上げ間近とされる。米CoinDeskが米国時間2026年6月3日に報じた。Coinbaseも参加を検討している。
ただし、正式な契約はまだ存在せず、Fortuneによれば覚書すら締結されていない可能性がある。細部はまだ初期段階だと捉えるべきだろう。だが戦略的な論理は、それに左右されない。
ステーブルコインにおいて最も困難な課題は、暗号技術ではなかった。Tether(テザー)とCircle(サークル)は何年も前にその技術的課題を解決している。1米ドル=1トークンというペッグ(連動)を維持し、要求に応じて償還され、数秒で動くドル建てトークンである。未解決の課題は、人々や加盟店に実際に使ってもらうことであり、それこそがVisaとMastercardが60年以上にわたって取り組んできた領域でもある。両社がステーブルコイン市場に参入するとの報道は、TetherとCircleにとってこれまで直面したどのライバルよりも脅威となるはずだ。
TetherとCircleの2大発行体が支配する市場
ステーブルコインは集中度の高いビジネスである。市場規模は約3250億ドル(約52兆円。1ドル=160円換算)で、TetherとCircleの2社が約80%を握っている。TetherのUSDTは約1150億ドル(約18.4兆円)、CircleのUSDCは約760億ドル(約12.16兆円)に達する。カードネットワークが参入を検討する際、この集中こそが参入機会となる。実質的な消費者ブランドも、加盟店ネットワークも、世界の銀行とのバランスシート上の関係も持たない2社の既存プレイヤーが、流通量を支配しているのだ。
発行体はトークンを売る。ネットワークは加盟店がそれを受け入れる理由を売り、銀行がそれを流通させる仕組みを売る。それこそがTetherとCircleがいくら資金を投じてもすぐには手に入れられない資産であり、VisaとMastercardがすでに保有しているものだ。
その根底にある報酬は、準備金の運用益である。ステーブルコインを裏付ける準備金は短期国債や現金で保有され、利息を生む。この市場規模では、その利回りは年間数十億ドル(数千億円)に達する。米GENIUS法は発行体がステーブルコイン保有者にその利息を支払うことを禁じているため、コインを発行し流通を管理する者に利益が帰属する。インターチェンジ・フィーで1ドルあたり数セントを稼ぐことを本業とするVisaとMastercardにとって、準備金を保有し、自社のエコシステム内にとどまる残高から利回りを得られる商品は、既存のインフラに新たな収益源を追加することを意味する。競争上の脅威を考慮する以前に、これだけで構築する動機として十分だ(編注:インターチェンジ・フィーは、加盟店契約会社[アクワイアラ]がカード発行体[イシュア。カード保有者の銀行・カード会社]に支払う手数料を指す。店舗が負担する手数料の一部が、この形でイシュアへ配分される)。
この集中には別の側面もある。TetherとCircleの2社が市場の約80%を握っているため、実際の決済網を持つ有力な新規参入者は急速にシェアを奪える。ほとんどのユーザーは、自分のアプリや取引所がデフォルトで設定しているコンプライアンス準拠のドルトークンをそのまま保有するからだ。特定のステーブルコインへの忠誠心は薄い。人々がUSDCやUSDTを保有するのは、それが目の前にあるからであり、より多くの人々の目の前に現れるステーブルコインこそが、戦略のすべてなのだ。
Visa、Mastercardによるステーブルコイン関連企業の買収は、参入のシグナルだった
この動きは1年以上前から進んでいた。Stripeはステーブルコインインフラ企業Bridgeを11億ドル(約1760億円)で買収し、2025年2月に取引を完了した。Mastercardは2026年3月、ステーブルコイン決済企業BVNKを最大18億ドル(約2880億円)で買収することで合意した。同社にとって過去最大のデジタル資産関連案件である。Visaは4月に決済パイロットプログラムを9つのブロックチェーンに拡大し、年間換算で70億ドル(約1.12兆円)規模に達したと発表した。前四半期比50%増である。各案件は発行スタックの一部を獲得している。準備金、決済、オンチェーンインフラだ。企業がこれらの要素を揃えるのは、独自のコインを発行する計画がある場合だ。
これらの取引の背景を見れば、この領域がいかに競争激化しているかがわかる。MastercardがBVNKを獲得する前、Coinbaseは昨年末に約20億ドル(約3200億円)で同社を買収する寸前だった。またMastercardは以前、暗号資産企業Zerohashを15億〜20億ドル(約2400~約3200億円)で買収する交渉を進めていたが、破談に終わっている。BVNK自体は2024年12月の資金調達ラウンドで7億5000万ドル(約1200億円)の評価を受けていたため、Mastercardは18カ月足らずで2倍以上の金額を支払った計算になる。副次的な事業と見なしている能力に対して、企業同士がこのような競り合いをすることはない。



