この数カ月、岩の下で暮らしていたという人でもない限り、世界最大級で最も影響力のある未公開企業3社が、同じ年に上場する準備を進めていることは知っているだろう。言うまでもなく、スペースX、アンソロピック、オープンAIのことだ。これら米国企業3社の新規株式公開(IPO)により、合計で4兆ドル(約640兆円)近くの時価総額が公開市場に新たにもたらされると見込まれている。
ことさら大げさに言うつもりはないが、これほどの規模の出来事はインターネットの黎明期以来のことである。
これらの超大型IPOは、インデックスファンド(指数に連動するファンド)などへの投資を通じて退職後の資金を積み立てている人にとって、どんな意味をもつのか。ここでは、それについて考えるための補助線を引いてみたい。
企業は非公開のままでいる期間が長くなっている
読者のなかには、IPOが企業にとって成長資金を調達するための手段だった時代を覚えている方もいるだろう。1990年代半ばから2000年代初めのドットコム時代、企業はかなり早い段階で上場していた。利益が出ていないどころか、たいした売上高もない時点でIPOに踏み切る場合もあった。米フロリダ大学の研究プロジェクト「IPOイニシアチブ」によると、米国で上場した企業数は1995~96年のピーク時には年700社近くにのぼった。IPO時点の「企業年齢」(設立からの経過年)も若く、中央値で約6〜7年だった。
そうした時代は過ぎ去った。過去20年でプライベートキャピタル(未公開企業への投資)市場は著しく深化し、ベンチャーキャピタル(VC)は拡大した。一方で、上場企業に課される規制上の負担は増した。
これらの要因が相まって、企業は未公開のままでいる期間が長くなる傾向にある。年間IPO件数は1990年代半ばのピークから大幅に減り、上場時の企業年齢の中央値は約12~14年と、当時より2倍ほど年長になっている。
わたしたちがいま目のあたりにしているのも、まさにそうした事態だ。スペースXの創業は2002年にさかのぼる。アンソロピックは2021年の設立だが、VCの歴史を通じても、ほかにほとんど類を見ない急速な成長を遂げた。つまり、両社は成熟し、すでに規模を拡大している企業であり、プライベート市場からの資金調達で何年も成長してきた末に、やっと公開市場に登場しようとしているのだ。



