いまや何百万人もの人がAIに「お願いします」と「ありがとう」を言っている。会話の相手である機械が、助けてくれる同僚のような文体で書き、こちらの発言を覚え、親しみやすい口調で応じるのだから、それは自然な感覚だろう。
しかし、私たちは本当にソフトウェアに礼儀正しくするべきなのだろうか。
これは小さな問いで、ばかげているようにも聞こえる。だがこの問いは、テクノロジーとの関係が変化しているという、より大きな事実を示唆している。AIチャットボットは、メールの作成や会議の要約から、調査、計画、意思決定の支援に至るまで、日々の仕事と生活の一部になりつつある。対話の精度が上がるほど、私たちの多くはそれを道具ではなく社会的存在、あるいは友人として扱うようになってきている。
Futureの調査では、AIと話す際に70%の人が礼儀正しく振る舞うと答え、多くは「それが正しい振る舞いに感じる」と述べた。一方で否定的な見方は、「お願いします」や「ありがとう」といった余分な言葉がトークンを消費し、計算リソースと電力を使うだけでなく、感情も意識も持たないシステムにそれらを投影することを促してしまう、と主張する。
では、礼儀作法はAIをより役立つものにするのか。人間同士の会話から持ち込まれた、害のない習慣にすぎないのか。それとも私たちは、線引きを忘れたまま、機械を擬人化して扱う習慣が、無意識のうちに刷り込まれているのだろうか。
AIに礼儀正しくするべき理由
礼儀正しさがAIの回答を改善し得ることを示す証拠はいくつかある。初期の研究では、丁寧なプロンプトは思慮深く、詳細で、バランスの取れた回答を生みやすい一方、無礼だったり唐突だったりするプロンプトは、短く、役に立ちにくい回答につながることがある、と示唆されていた。
こうした傾向は、これらのシステムの仕組みを考えれば理解できる。AIモデルは、膨大な人間の言語データを用いて学習している。人間同士の会話では、丁寧な依頼は、より慎重で役に立つ返答が返される文脈で現れやすい。無礼だったり見下すような言葉遣いは、返答が防御的だったりぶっきらぼうだったり、あるいは手抜きだったりするような文脈で現れやすい。AIはそうしたパターンを拾い得る。



