多くの人は、偶然に利き目を見つける。狙いを定める時や顕微鏡をのぞく時、あるいは、片目を閉じると、遠くの物体が飛び出して見えることに気づいた時などだ。人間の約3分の2は右目が利き目で、残りの大部分は左目が利き目だ。ごく一部の人には、明確な利き目がない。
しかし、そもそもなぜそのような非対称性が存在するのだろうか。そしてそうした非対称性は、脳について何を物語るのだろうか。ほとんど誰も問うことのないこうした疑問について、研究の成果として現時点でわかっていることを紹介しよう。
「利き目」の目的とは何か
端的に言うならば、完全にバランスが取れた脳というのは、進化の観点から見れば、妥協策だ。脳の側性化(Lateralization)、つまり、左右の脳半球間の役割分担は、設計上の欠陥ではなく、それこそが本来の設計なのだ。
脊椎動物種を対象とした査読付き研究では、一貫して、脳の側性化が進んだ個体が、そうでない個体よりも優れたパフォーマンスを示すことが明らかになっている。その理由は、大脳半球間で機能を分担することで、並列処理を可能にし、機能の重複を避け、競合する神経反応が干渉しあうのを防げるからだ。
逆説的に見えるが、両半球がすべてを均等に処理する脳は、より多くのリソースを費やしながら、実際には、より少ない成果しか上げられないのだ。
利き目は、その非対称性を最も明確に表わす特徴の一つと言える。大脳半球間の情報伝達速度を追跡した2018年の電気生理学的研究で、利き目は、「情報が、どちらの方向により速く流れるか」に関する信頼できる予測因子であり、このパターンは、個人の全体的な側性化プロファイルと密接に関連していることがわかった。
手と目が「右利き」の人では、視覚情報は右半球から左半球への方が、その逆よりも速く伝わる。利き目が逆だと、このパターンは逆転する。利き目とは、単に、片方の目をもう片方より好むだけのことに見えるが、脳のレベルで見ればこれは、両半球がどのようにコミュニケーションをとるかという根本的な特徴なのだ。
こうした側性化は、霊長類が独自に生み出したものではない。魚類、鳥類、頭足類、哺乳類の広範にわたり、同様の利き目が確認されている。これは、単なる個体の癖ではなく、集団レベルでのパターンとして現れている。
例えば、他の魚のうろこを主食として食べる「鱗食魚」であるシクリッドの一種(Perissodus microlepis)では、利き目が捕食時の攻撃方向(左右どちらの側から襲うか)を直接的に支配している。人工的な白内障を起こしてその目を遮ると、攻撃の角速度が半分以下になり、成功率も著しく低下してしまう。
多くの脊椎動物において、脳の左半球は学習された日常的な行動、右半球は緊急時の反応に関与している。こうした文脈において、利き目とは太古からの特徴であり、私たちの系統より数億年も前にさかのぼる、脊椎動物の遺伝的特徴の一部なのだ。



