世界的な宇宙港ネットワークの構築に向けて
スターシップにとって最大の障害は、インフラの欠如かもしれない。航空会社は世界中に数千カ所ある既存の空港を利用できるが、スターシップによるP2P移動には、まったく新しいグローバル輸送ネットワークを構築する必要がある。
スペースXは以前、乗客が沿岸の大都市から船で沖合のプラットフォームまで移動し、そこで打ち上げを行うという構想を示している。したがって、専用の沖合発着プラットフォームに加え、海上輸送システム、安全確保のための立入禁止区域、推進剤の貯蔵施設、これら全てに関する規制当局の承認が必要となろう。
同社が現在保有する宇宙港は、米テキサス州ボカチカ半島にある「スターベース」のみだ。ただ、新たな宇宙港の建設候補地を探しているとの情報もある。スペースXもこれを認め、「われわれがスターシップの打ち上げ回数を増やし、年間数千回のフライトを目指していることは周知の事実だ。これを実現するには多くの異なる場所からの打ち上げ能力が求められるため、将来的なスターシップの運用拡大を視野に、国内外で適切な場所を常に模索している」とX(旧ツイッター)に投稿した。
その他の障害としては、安全認証、運用コスト、そしてもちろん乗客の受容性が挙げられる。誰もがロケットで旅行したいわけではない。
「グローバルな輸送網」は究極のビジネスゴールかもしれない
「人々はロケットに投資していると思っている。実際の投資先は、輸送の未来だと思う」。今月『Love Conquers Fear: Humanity, AI, and the Age of Abundance for All(愛は恐怖に打ち勝つ:人類、AI、そして万人のための豊かさの時代)』と題した著書を刊行する未来学者で起業家のブレット・ハートは、インタビューでこう語っている。
スペースXのP2Pフライトには理論上、巨大な市場機会がある。推計規模876億6000万ドル(約14兆700億円)の世界の民間航空機市場において、エアバスやボーイングに挑む存在となり得るのだ。航空業界ニュースメディアのSimple Flyingによると、2025年における市場シェアはエアバスが約56%、ボーイングが40%だった。航空宇宙産業は今まさに大々的な拡大を目前としている。統計データプラットフォームのStatistaの予測では、世界の航空機保有数は2043年までにほぼ倍増するとみられている。
スペースXはさらに、航空旅行市場にも参入するかもしれない。オンライン証券会社Vantageの推計によれば、2025年の市場規模は9100億ドル(約146兆円)で、2035年までに1兆6200億ドル(約260兆円)に達すると予測されている。Statistaによると、売上高と利益が最も大きいのは北米と欧州だが、旅客需要の伸びが最も急速なのはアジア太平洋地域である。


