エコシステム

2026.06.13 14:15

激動のシリコンバレー 日本企業は新たなイノベーションの波をどうつかむべきか?

SBI Holdings USA, Inc. CEO山田昌平(左)、同社シリコンバレー拠点ヘッドの高 錫俊(右)、そして筆者(中央) Courtesy of the Author

SBI Holdings USA, Inc. CEO山田昌平(左)、同社シリコンバレー拠点ヘッドの高 錫俊(右)、そして筆者(中央) Courtesy of the Author

米国のスタートアップ・エコシステムが、AIを起点に大きな転換点を迎えている。生成AIの急速な進化によって、スタートアップの立ち上がり速度はかつてないほど加速し、創業からわずか1〜2年でARR(年間経常収益)が1億ドル規模に到達する企業も現れ始めている。一方で、その変化は投資家側にも大きな変革を迫っている。従来型の「待って見極める」投資スタイルが通用しなくなりつつあり、より早い段階での情報アクセス、ドメイン理解、ネットワークが決定的に重要になっている。

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こうした中、日本企業はいかにして米国イノベーションの最前線にアクセスすべきなのか。米国で新ファンドを立ち上げ、投資の最前線に身を置く、SBI Holdings USA, Inc. CEO山田昌平氏、同社シリコンバレー拠点ヘッドの高 錫俊氏と共に、シリコンバレーで今起きている変化と、日本企業に求められる新たな戦略について語り合った。


「AIによって、スタートアップの時間軸そのものが変わった」

吉川絵美(以下、吉川):ここ数年で米国のベンチャー投資環境が大きく様変わりしています。米国を拠点に投資の最前線にいらっしゃるお二人は、現在の状況をどのように見ていますか。

山田昌平(以下、山田):一番大きいのは、やはりAIの破壊的インパクトです。私は以前、Anthropic(アンソロピック)への投資検討をしていた時期があり、それ以降、創業者のダリオ・アモデイ氏の発言を追ってきました。彼の発言を借りると、数年前まで生成AIはまともに算数すらできなかった。しかし今では、アンソロピックのコードの大部分をAI自身が生成している。そして、この進化速度は加速度的に進んでいます。

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以前は「ユニコーンになるには7~10年程度かかる」という前提がありました。今は、AIによって1〜2年でそこへ到達する可能性がある。例えば、CursorはARRが1億ドルに2年程度で到達しました。SBIの投資先のGensparkも9カ月程度でそれに達しています。

しかも、そのAIのインパクトはソフトウェア業界だけに留まらず、あらゆる産業に波及しています。だからこそ、AI関連スタートアップへの期待値も高まり、バリュエーションも急上昇している。マーケットの前提そのものが変わり始めていると感じます。

高 錫俊(以下、高 ):AIそのものは、ある意味で“基盤”になり始めています。今は「AI × 物理世界」へと主戦場が移っていて、フィジカルAI、ロボティクス、防衛テック、宇宙など、よりバーティカルな領域へ進化が始まっています。だからこそ、単に「AIに投資する」のではなく、その領域を深く理解している専門家の存在が重要になってきています。

吉川:有望なスタートアップへの投資における競争が激化する中、まだプロダクトが成熟していないアーリーステージの段階から、いち早く有望案件を見極め、かつ創業者からの信頼を勝ち得ることが必要です。そのためには「領域専門性」をもつことが極めて重要になってきています。
プレシードやシード投資に特化する、いわゆる「マイクロVC」(ファンドサイズ2000万〜5000万ドル程度)の世界でも、専門性がさらに細分化される傾向があります。例えば、「AI特化型」というだけでは既に差別化が難しく、その中でフィジカルAI特化、AIアシュアランス特化など、さらにロングテール化が進んでいます。

:ステージの概念自体も変化してきていると思います。以前は、Yコンビネータ(YC)は"アイデア段階"や"プレレベニュー"のスタートアップも多かったのですが、最近のバッチでは、すでにプロダクトが完成し、かなりの売上を持つ企業も増えています。例えば直近のWinter 2026バッチでは、デモ・デイ前の時点でARR 100万ドルを超えた企業が史上最多の14社にのぼります。YC自体が、プレシードというよりシードステージに近づいている感覚があります。

山田:日本ではまだ「YC採択=すごい会社」という見方も多いですが、YCの年間採択スタートアップの数は拡大の一途で、今では年間800社近いスタートアップを輩出しています。もはやYCですら玉石混交です。その中から本当に伸びる企業を見極めるには、個別企業や業界への深い理解が必要です。

宇宙テック、防衛テック、量子、AIなど、それぞれの領域を深く理解している特化型マイクロVCの存在感は、今後ますます高まると思います。

「現地VCや創業者から「日本企業は遅い」と何度も言われました。だからこそ、我々は日本企業でありながらも、“マイクロVCのように動く”ことを強く意識しています」(山田;写真左端)  Courtesy of the Author
「現地VCや創業者から「日本企業は遅い」と何度も言われました。だからこそ、我々は日本企業でありながらも、“マイクロVCのように動く”ことを強く意識しています」(山田;写真左端) Courtesy of the Author
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文 = 吉川絵美

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