日本企業の「シリコンバレー戦略」は次のフェーズへ
吉川:日本企業のアメリカでのイノベーション探索も、この10〜15年で大きく変化してきました。最初は、とりあえずのきっかけとしてシリコンバレー拠点のVCにLP出資をするところから始まり、その後、自分たちでも直接的な投資を手掛けようという流れでCVCブームへとつながっていきました。
当初は、プロダクトが成熟してくるシリーズB前後への投資が中心でしたが、先ほど話したような投資環境の変化によって、最近ではよりアーリーステージへの関心が強まっています。
山田:CVCには二つの難しさがあると思います。一つはソーシング。もう一つは、戦略投資と財務リターンのバランスです。
最初は「戦略投資だから財務リターンは不要」という議論になりがちですが、結局それだけでは続かない。一方で、財務リターンだけを追うと、今度は戦略性が薄れる。その両立が非常に難しい。
さらに今は、そもそも良い案件にアクセスできるかどうかが最大の課題になっています。特にAI領域では、会社設立前後から有望な起業家にアクセスするための競争が始まっています。加えて、投資の意思決定が遅いとその流れに取り残されてしまいます。
高:だからこそ、ローカルで早期の情報をもつプレイヤーとの連携が重要になります。単に投資するだけではなく、早い段階から関係性を築く必要があります。また、日本企業としてどのように協業や共同開発ができるか、また最終的にはM&Aまで含めた未来像を描いていく必要があります。
吉川:シードやプレシードは不確実性が高い世界であるが故に、手を出しにくかった日本企業は多かったと思います。ただ、ここ最近のイノベーションの加速によって、「ミッド・レイターステージだけを見ていては次の波を逃す」という危機感もかなり強くなっている印象があります。アーリーステージを探索すること自体が、“次の産業構造を知るためのアンテナ”になってきています。
山田:AIによって、スタートアップの成長速度そのものが変わっているからこそ、“ミドル・レイターまで待つ”という従来型の戦略では、完全に周回遅れになる。日本企業も、その前提を変えなければいけないと思います。


