IT・医療など60以上の事業を展開し、創業21期目で年度売り上げ1,700億円を超えたメガベンチャー、レバレジーズ。
事業会社として急成長を遂げてきた同社が、なぜ今、コンサルティング業界に挑むのか。代表・岩槻知秀が見据えているのは、AIによって「業界そのものが変わる」という確信だ。
「AIの浸透によって、コンサルティング業界そのものが変革を迫られています」
2026年1月に創業したばかりのレバレジーズ・コンサルティング・グループ(以下、LCG)の代表、岩槻知秀はそう切り出す。これまでITコンサルティングの世界では、上流の要件定義を固め、開発は協力会社に発注するのが定石だった。その構造は崩れつつある。
「要件さえ定義すれば、AIがコードまで書けるようになってきた。業務コンサルタントも、ITコンサルタントも、エンジニアの上流工程を担ってきた人も、同じ仕事に混じり合っていく。AIによって、職種の境界が溶けていくんです」
その先に岩槻が見据えるのが、コンサルタントとエンジニアが一体となった組織だ。海外で「FDE(Forward Deployed Engineer)」や「DS(Deployment Strategist)」と呼ばれ始めた職種──顧客の現場に深く入り込み、戦略から実装までを引き受ける人材──を育て、上流から下流まで一気通貫で伴走し顧客の内製化を実現する企業をつくる。それが、変化の最中にある業界に対するLCGの答えだ。
AIは、人材の価値を高める
LCGの強みは、レバレジーズの60以上の事業でAI駆動開発を実装し続けてきた「実践知」にある。
「AI駆動開発の知識は、実際にやってみないとわからないことだらけです」と岩槻は言う。レバレジーズは社内のプロジェクトを、AI駆動開発のレベルでおよそ3つに分けているという。
「長く運用してきた既存システムでは、ソースコードの可読性を保ったまま、慎重にAIを取り入れる。比較的新しいシステムでは、可読性を担保しながら、もう一段踏み込む。そして可読性を意識せずに書ける案件では、ひとりがAIを使い、3週間で50万行を超えるコードを書くこともありました」
どのプロジェクトに、どの手法が最適なのか──AIネイティブの開発には、まだ標準化された型が存在しない。
「自分たちで運用し、試行錯誤するなかでしか得られない知見があります。大企業ほど、一気には変われない。だからこそ、顧客の状況に応じて段階を見極め、最適なやり方を提案できることに意義があると考えています」
では、AIの普及は人材にとって何を意味するのか。岩槻の見立ては明快だ。
「ボストン大学のジェームズ・ベッセン氏の分析でも、私たちのレバテックで実際に起きていることを見ても、エンジニアの数は増え続けています。生産性が上がり開発のコストが下がると、これまで1年半〜2年ほどかかっていた開発期間が半分になる。開発コストも3分の1程度まで下落する可能性があり、『ソフトウェアでできること』という意味でのDXの需要そのものが膨らんでいくのです」
必要とされる人材の価値は下がらない。むしろ、AIを使いこなし戦略から実装までを担える存在、つまり「FDE」や「DS」の需要は高まり続けると、岩槻は確信している。ではなぜ、その変化に既存のプレイヤーは動きにくいのか。
「既存のコンサルファームは上流に特化し、コーディングは外部に出してきました。SIerは、準委任契約だと既存の課金モデルのまま大きく生産性を高めないほうが収益が生まれるという構造も存在しやすい。長年の成功モデルを、自ら壊さなければならないのです。一方で私たちのような新興のファームには、守るべきレガシーがない。だからこそ、早く変革に踏み出せます」
昨今ではIT投資額が膨らむ一方で、収益性向上に直結しないケースも少なくない。背景のひとつにあるのが、開発や運用を外部に委ね続け、特定のベンダーから抜け出せなくなる「ベンダーロックイン」の構造だ。特定ベンダーに頼るほど、自社でコントロールを失い外注単価が下がらない。そこでLCGは「内製化支援」を掲げ、顧客企業がAI駆動開発を回せる状態をつくるという。
コンサルタントにも、エンジニアにも次のキャリアの景色を
独立資本で未上場──レバレジーズが創業以来貫いてきた経営スタイルも、LCGの土台になっている。
「上場していれば、利益率が下がると株価に響きます。目先の利益率のために、必要のないプロジェクトを売ったり、単価を釣り上げたりせざるをえなくなる。私たちは未上場だからこそ、クライアントの事情に合わせて柔軟に動くこともできるのです」
岩槻が、次のキャリアを探すコンサルタントに送るメッセージは明快だ。
「コンサルティング出身の方は、より実装に近いITのキャリアへ。エンジニア出身の方は、コンサルティングや上流のスキルへ。職種の枠を超えて、フルスタックに力を磨ける環境がここにあります。レバレジーズは多くの企業に名を知られ、財務基盤も顧客基盤も強い。無名のファームのような『この会社は大丈夫か』という不安がないぶん、思い切ったチャレンジに踏み出せるはずです」
レバレジーズでは創業初期から、営業からエンジニア、マーケターから人事へと、職種をまたぐキャリアを当たり前にしてきた。そこにも、強みを覗かせる。
「市場や現場と向き合い続けるなかでしか、仮説を立てるセンスは磨かれません。打った施策に市場がどう反応したかを、長期で見届けて頭に蓄積していく。その積み重ねが、AI時代に問われる発想力の土台になります」
事業会社のフィールドを併せもつLCGは、その経験を積める場でもある。同時に、岩槻が見据える先には、新しい職種の輪郭も見えている。
「開発・マーケティング・営業―事業を動かす3つのリソースを、AIで束ねる『GTM(Go-To-Market)エンジニア』のような職種が生まれつつあります。従来は膨大な時間をかけてようやくたどり着けた領域に、AIによって最短距離で届くようになっていくはずです」
LCGが育てたいのは、最終的に事業そのものを構想できる人材だ。
「これから問われるのは、人間の想像力です。思ったことがすぐかたちになる時代に、『何をやりたいか』という動機と、仮説を立てるセンスが、価値を分けていく。その力を、LCGに集う仲間と磨き、クライアントの事業の現場で発揮していきたいですね」
レバレジーズ・コンサルティング・グループ
https://leverages-consulting.com/
いわつき・ともひで◎レバレジーズおよびレバレジーズ・コンサルティング・グループ 代表取締役。早稲田大学在学中からIT企業でエンジニアとして経験を積み、卒業と同時に2005年レバレジーズを設立。IT、医療・ヘルスケア、M&Aなどの領域で多角的に事業を展開し、創業20年で年商1,400億円超の企業へ成長させた。2024年より新経済連盟の幹事も務める。



