AI

2026.06.11 07:00

アップルはAI戦略をどう立て直したのか? WWDCで見えたSiriとGeminiの未来、その決定的な差

Justin Sullivan/Getty Images

その中身は、驚くほどアップルと似ている。ひと言頼めば、GeminiがGmailから子どもの授業案内を探し出し、必要な教材を特定し、買い物アプリのカートに入れて、最後の確認だけを人に委ねる──発表で披露されたこのデモは、Apple Parkで見たSiri AIのデモと、ほとんど同じ未来を指している。提供時期も重なる。Gemini IntelligenceはAndroid 17の正式版とともにこの夏、Pixel 10とGalaxy S26から始まり、他のAndroid端末へはそのサブセット版を段階的に提供していく。

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公平に評価するなら、AIをコンシューマに届け続けてきた実績ではグーグルに分があることは明らかだ。Geminiはすでに日本語で自然に会話し、基本機能は無料で使え、料金体系も確立されている。しかもAndroidでは、アシスタントそのものを好みのAIに──たとえばChatGPTに──切り替えることさえできる。

検索とAIこそが本業であるグーグルにとって、Geminiの名が世界中の端末で呼び出されることは、ネット検索をほとんどしなくなるかもしれない時代の、新しいポータルを確保することに等しい。

同じ夏、同じ発想、同じGeminiの系譜。だが、グーグルはその名を看板に掲げ、アップルは名を伏せた。軸足も違う。アップルはデバイスに、グーグルはクラウドに置く。どちらの足場が実を結ぶかは、もうしばらく見守りたい。

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名前のいらない未来へ

さて、WWDCの話題に戻ろう。

この基調講演は、次世代におけるアップルの事業基盤、いわばビジネスモデルの基本形を描いたものだと読み替えることもできる。結びでティム・クックは在任を振り返り、異例なほど私的な感慨を言葉にした。CEOとして立つ最後のWWDCである。アップルを世界で最も稼げる企業の1つへ育て上げたことは、彼の何よりの功績だ。

9月1日にはジョン・ターナスがその座を継ぎ、今回示された“新しいアップルの設計図”を基に戦略を練り、次々に実行に移していくことになる。

問題は山積みだ。AI戦略の出遅れは、時間をかけて解決するほかない。EUではデジタル市場法への対応が追いつかず、iPhoneとiPadでのSiri AIは当面見送られた。中国でも、規制対応が終わるまで提供されない。AIを製品戦略の中心に近づけるほど、地域ごとの格差が広がる。

そして日本のユーザーには、もう1つの現実がある。日本語をすでにこなれさせたGeminiに対し、Siri AIは英語版のベータが年内に始まる段階で、日本語の提供時期は明らかにされていない。届くまでは、“どの程度の日本語”なのかもわからない。

それでも、アップルが描こうとしているビジョンの輪郭は見えてきた。

数年後、新しいAI世代のスマートフォンを手にしたあなたが「あの人の新しい住所、どこだっけ」と尋ねるとき、おそらくそれをAIだとは意識していない。裏でどのモデルが動き、どこの計算機が回ったのかを知る必要もない。

どれほど自然に生活に溶け込むことができるか。2つのIntelligenceの勝敗を分けるのは、コンセプトではなく実装だ。来年の今ごろ、あなたはどちらのスマートフォンへ頼みごとをしているだろうか?

編集=安井克至

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