コブラ科のヘビ「ブラックマンバ(学名:Dendroaspis polylepis)」は、世間一般のイメージの中でひときわ特異な存在感を放つ動物だ。蓄積した恐ろしいイメージがこれほど先行し、実際の生態がかき消されてしまうことが多い動物も珍しい。
ブラックマンバは一般的に、並外れて攻撃的で、あり得ないほど動きが素早く、もっぱら危険をもたらすためだけに存在しているかのように表現される。
しかし、ブラックマンバに科学的な関心が集まる主な要因は、その気性の激しさでも、地上を移動するその動きでもない。毒物学者や爬虫類学者がブラックマンバに注目するのは、その毒が獲物の体に入った後、その生理学的プロセスが根本的に変化するまでのスピードが速いからだ。ブラックマンバによって重度の咬傷を負った場合、適切な治療を受けずに放置すれば、たちまち症状があらわれ、極めて短時間で呼吸不全に陥る恐れがある。
2021年に『Clinical Toxicology』に掲載された総説論文は、ブラックマンバによる咬傷であることが確認された複数の症例を検証した。これによると、症状が通常は1時間以内に発現していたことと、臨床症状の主な特徴は神経機能障害であったことが明らかになった。
この文脈で重要なのは、ブラックマンバの毒が単に強力ということだけではない。毒が、全身の情報伝達を担うシステムに作用しているという点だ。
「攻撃的なヘビ」と言われるブラックマンバ
ブラックマンバが攻撃的だと思われているのは、一つには、見てのとおりの特徴的な姿にある。ブラックマンバは、アフリカに生息する毒ヘビの中で体長が最も長く、4mを上回ることもある。また、短い距離を瞬時に移動できるその能力は、ブラックマンバに関する話で頻繁に取り上げられ、それが世間一般のイメージ形成を大きく後押しした。
興味深いのはその名前で、いささか誤解を招く。というのも、ブラックマンバの体は通常、灰色やオリーブ色、茶色で、黒ではない。「ブラックマンバ」という名前は実のところ、身を守ろうと口を開いた時に見える口内が暗褐色であることに由来する。
この情報は、単なる豆知識として片づけられがちだが、より大きな傾向も見えてくる。つまり、危険な動物は簡単に神話化される、ということだ。ある生物種に強烈な評判が定着してしまうと、その見た目や行動を観察しようとする際には、どうしてもその評判がフィルターとしてかかる。ブラックマンバはしばしば、人を執拗に追い回すとか、攻撃するなどと言われるが、爬虫両生類学的な観察では、こうした見方には裏付けがない。



