コンシェルジュがいてもレストランの仕事は変わらない
検索の本質は、30年変わっていない
筆者が検索連動型広告というビジネスモデルを創り出したOvertureの日本進出に参画し、Yahoo! JAPANなど日本の検索エンジンに広告を配信するというビジネスに携わったのは、もう20年以上も前のことだ。当時、広告主や広告代理店はもとより、検索エンジン自身も、検索結果に広告を出しても誰もクリックしないだろう、とその効果には非常に懐疑的であった。
そうしたパーセプションを変えようとOvertureが展開したのがThink Search(検索について考えてみよう)というキャンペーンである。

このキャンペーンでOvertureが伝えようとしたメッセージは、以下のようなものであった。
Instead of looking for customers, what if they found you? That's the big idea of search. (顧客を探しに行くのではなく、顧客の方からあなたを見つけてくれるとしたら? それこそが、検索をマーケティングに活用する醍醐味です。)
その後、米国Yahoo!がOvertureを買収し、GoogleはOvertureが持つ検索連動型広告の関連特許についてライセンス料を支払うことで、自らも検索連動型広告を本格的に展開することになるのだが、「キーワードを介して人と情報がつながる」という検索の本質は今日も全く変わっていない。ちなみに、2025年時点でも、Googleの売上の約半分は検索連動型広告が支えている。
ホテルのコンシェルジュが薦めるレストランになるには
つまり、検索エンジンが変わったように見えるのは「検索結果の見せ方」だけなのである。そして、そうした見せ方が変わる度に「これまでのSEOは死んだ。何もしなければあなたも終わる。」といった煽り文句で、新たなサービスやソリューションを売ろうとする人や企業が登場するということが繰り返されてきたが、その度にGoogleは「本質は何も変わっていない」という声明を出し続けてきた。
海外の知らない町に出張して、夕食をどこで食べるか決めかねているとしよう。ホテルの部屋に置かれている情報誌やウェブサイトをみれば、近所にどんなレストランがあるかは分かるが、味の良し悪しや、評判、自分の好みや予算と合う店かどうかを、自力で正しく判断するのは容易ではない。
そんな時、ホテルのロビーを歩いていたら、コンシェルジュを見つけたので、予算や人数、食べ物の好みなどを伝えてみたところ「お客様にはこの店のこの料理がおすすめですよ」と教えてくれた。つまり、GoogleのAI Overviewとは、検索エンジンの上で仕事をするコンシェルジュのようなものと言える。
コンシェルジュは、自分が行ってみて美味しいと感じた店や評判の良い店に関する情報を普段から蓄積(インデックス)しておいて、その中から、一人ひとりの顧客のニーズにある店を紹介する。なので、コンシェルジュに勧めてもらえるレストランになりたければ、平素から美味しい料理を作り、丁寧な接客を行い、評判の良い店に育てることに努めるべきであろう。AEOやGEOにばかり注目するというのは、料理や接客を放り出して、コンシェルジュの目に留まるような小手先の策に血道を上げるようなものであり、まともなコンシェルジュなら、そんな店を大切な顧客に勧めることはしないだろう。


