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2026.06.25 11:00

“ここ”から始まる、新しい旅の起点──KOKO HOTELSが挑む、“寝るだけ” ホテルからの脱却

現在、全国で76店舗と急拡大するKOKO HOTELS。インバウンド需要の拡大を追い風に、“寝るだけ”ではない宿泊体験を提案し、宿泊特化型ホテルの再定義に挑むポラリス・ホールディングスの戦略と、その先に描く未来とは。


インバウンド需要の回復、ワーケーション、マイクロツーリズム、そして“暮らすように旅する”という価値観の広がり……コロナ禍を経て、ホテル業界は大きな転換期を迎えている。かつては観光か出張か、で二分されていた宿泊需要は、もっと曖昧で多様なものへと変化した。

「ここ10年で見ると、インバウンド市場はずっと右肩上がりです。一方で、日本人のビジネス出張はリモートワークの普及もあって横ばい、もしくは少し減少傾向。国内レジャー需要は大きく伸びています」

そう語るのは、全国でホテルブランド「KOKO HOTELS」を展開するポラリス・ホールディングス代表取締役社長、田口洋平(以下、田口)だ。特に印象的なのは、インバウンドのリピーター化だという。韓国、台湾、香港など東アジア圏からの旅行者は東京、大阪、京都という従来より定番のデスティネーションだけではなく、高松や別府、尾道といった中小規模の地方都市へも足を延ばし始めている。

「インバウンドが地域文化を求めて分散化しているなか、ホテルも変革を求められています。以前の宿泊特化型のビジネスホテルは、“安心・清潔・機能的”というミニマムな快適性・利便性と、価格優位性を打ち出してきました。でも、今はそれだけでは選ばれない。新しいホテルは、それらを備えていることが当然だからです」(田口)

田口洋平 ポラリス・ ホールディングス 代表取締役社長。
田口洋平 ポラリス・ ホールディングス 代表取締役社長。

“寝るだけ”では選ばれない時代

加えて、土地価格や建築費の高騰もあり、かつてのように安価な宿泊特化型ホテルを大量出店するモデルは成立しにくくなっている。だからこそ、今求められているのは価格競争ではなく、「そのホテルに泊まる意味」をどうつくるか、という体験価値の向上であろう。

こうした市場の変化のなかで「KOKO HOTELS」が掲げるのが、「HERE DISCOVERY BEGINS. ここから見つける旅を」という新たなタグライン。同社取締役兼最高執行責任者の下嶋一義(以下・下嶋)は語る。

「ホテルを館内完結型にするのではなく、地域を発見する“起点”にしたいんです」

「KOKO HOTELS」では、各店舗に“アンバサダー”を配置。地元の飲食店や観光スポット、文化、イベントをリサーチし、スタッフ同士で共有するほか、店舗によっては手描きの観光マップや飲食店案内を作成する。地域イベントにも参加し、札幌ではローカルキャラクターとのコラボルーム、福島・須賀川では耕作放棄地を活用したニンニク栽培など、地域との接点づくりにも積極的に取り組んできた。

「昨今のホテル業界は、ラグジュアリー特化型と、ローコスト・省人化を進める宿泊特化型の二極化が鮮明ですが、これからはホテルも“自分の価値観に合うかどうか”で選ばれる時代になると考えています」(田口)

確かに、現代のホテルは設備面だけで見れば大きな差がつきにくい。安全で清潔、Wi-Fi完備でベッドが快適なのは、もはや当たり前。その前提で選ばれる理由となるのは、“どんな時間を過ごせるか”という感覚的価値だ。近年、地域性や独自の世界観を打ち出したライフスタイルホテルが支持を集めているのも、その流れの延長線上にある。

下嶋は、「『KOKO HOTELS』はいわゆるライフスタイルホテルとは少し違うのですが」と前置きしながらも、目指すのはにぎわいや交流ではなく、“知的な刺激”を感じられる滞在だと語る。

「デザインやアート重視で、夜はDJがいるようなパーティ型のホテルって、好きな人はすごく好きでしょう。でも、私自身はもっと落ち着いて、その街の歴史や文化を知ることができる滞在のほうが心地いい。そういう価値観に共感してくださる方に選ばれたいと思っています」

「KOKO HOTELS」から生まれた、日本の温泉文化を体験できる新ブランド「kokonoyu」は、「Retreat―自分と向き合い、心を解き放つ滞在―」がコンセプト。その第1号店として、大分・別府駅から徒歩3分という好立地に「kokonoyu別府」を2027年夏開業予定。最上階に露天風呂つきの天然温泉を備える10階建て、全150室。©UDS
「KOKO HOTELS」から生まれた、日本の温泉文化を体験できる新ブランド「kokonoyu」は、「Retreat―自分と向き合い、心を解き放つ滞在―」がコンセプト。その第1号店として、大分・別府駅から徒歩3分という好立地に「kokonoyu別府」を2027年夏開業予定。最上階に露天風呂つきの天然温泉を備える10階建て、全150室。©UDS

アセットライトが可能にするスピード展開

興味深いのは「KOKO HOTELS」が“運営”主導のブランドであることだ。ホテル業界には、自社で土地や建物を保有する“オーナー型”の企業も多い。一方、「KOKO HOTELS」はアセットライト、つまり運営を軸に成長するモデルを採用している。

「ホテルを一棟開発するには、数十億円単位の資金が必要です。すると、出店スピードはどうしてもスローになる。我々は不動産ではなく、運営力とブランド価値で競争力を高めていきたいと考えています」(田口)

これは、世界のホテル業界でも進んでいる潮流だ。マリオットやヒルトンのようなグローバルブランドも、不動産保有より“ブランドと運営”を強みに成長してきた。

「KOKO HOTELS」もまた、不動産保有ではなく、“地域体験をどう設計するか”を競争力として、日本全国への展開を進めている。
もっとも、運営会社型にも難しさはある。チェーン展開を進めれば進めるほど、ブランドの統一感と地域性の両立が難しくなるからだ。

「全部をトップダウンで統一すると、“どこへ行っても同じホテル”になってしまう。でも逆に、現場に任せすぎるとバラバラになる。そのバランスは少々難しいですね」(下嶋)

現在、同社は全国を11の地域に分け、エリアトレーナー制度を導入。サービス品質を一定水準で保ちながらも、地域らしさを表現できる体制づくりを進めている。

「チェックイン・アウトなどオペレーションなら、ある程度標準化できます。でも私たちが本当に届けたいのは、“この街を知ってほしい”という想いなんです」(下嶋)

下嶋一義 ポラリス・ ホールディングス 取締役兼最高執行責任者。
下嶋一義 ポラリス・ ホールディングス 取締役兼最高執行責任者。

そうした考え方は、今後のブランド展開にも色濃く反映されており、大分・別府では温泉文化をテーマにした「kokonoyu」、沖縄・那覇ではアップスケールブランドのホテルを計画。さらに、長期滞在型アパートメントホテルの展開も進めている。だが、この新ブランドの展開も、単なるポートフォリオ拡張を目的としたものではない。ポラリス・ホールディングスが一貫して重視しているのは、それぞれの土地に根ざした体験価値を、いかに宿泊体験へ落とし込むかという視点だ。

「カテゴリーや価格帯が変わっても、その土地の文化や地元の人との接点をどう生み出すか、という根底の思想は共通しています。それはFeel The Local、日本の地域性を感じていただくということ」(田口)

“寝るだけ”のホテルではなく、地域の文化や歴史、人との接点を生み出す場所へ……「KOKO HOTELS」が目指しているのは、“泊まる”を超えて、街へ一歩踏み出すための新しい旅の起点なのである。

ポラリス・ホールディングス
https://koko-hotels.com/


たぐち・ようへい◎ポラリス・ホールディングス代表取締役社長。ITコンサルティング、ホテル運営、ホテルリート運用企業などを経て、ホテル開発・運営の両面に携わる。2022年よりポラリス・ホールディングス取締役として運営・開発事業を統括し、2025年より現職。

しもじま・かずよし◎ポラリス・ホールディングス取締役兼最高執行責任者。ホテル・旅行業界でマーケティング、ブランド戦略、国際事業に従事。国内外のホテル運営やオンライン旅行事業に幅広く携わり、2021年よりミナシア代表取締役社長、2025年より現職。

promoted by ポラリス・ホールディングス | text and edited by Miyako Akiyama | photographs by Kenta Yoshizawa