長い国際線フライトを終え、空港でスーツケースを転がしながら歩いている場面を想像してほしい。周囲では何百もの手荷物が、爆発物や武器、そのほか危険物を検知するために設計された保安システムを通過していく。バッグの中身は、旅行に最適な一番快適なパーカー、お気に入りのスナック、ノイズキャンセリングヘッドホン、そしておいしそうなお菓子のようなリップクリーム──そんなところだろう。だが多くの旅行者が気づかないのは、あなたの荷物のすぐ近くにあるありきたりなバッグの一部が、別種の禁制品を運んでいる可能性があるということだ。衣類の下に隠され、アルミホイルで包まれ、あるいは子どものおもちゃの中に忍ばせられているのは、乾燥させたタツノオトシゴやフカヒレ、ナマコかもしれない。いずれも違法な野生生物取引に向かう品だ。
野生生物の密輸と聞くと、ゾウの象牙やサイの角を思い浮かべがちだ。しかし、海洋生物をめぐる巨大で、しかも見過ごされがちな取引が進行している。年間で数十億ドル規模に達する海洋野生生物の密輸は、脆弱な個体群を脅かし、生態系を攪乱し、国際的な犯罪ネットワークの資金源にもなる。これを検知することは長年の課題だった。
密輸される海洋生物3種、AIが92%の精度で見抜く
だが今、研究者チームが、密輸業者が海洋野生生物を「見えないところに隠す」ことをはるかに難しくし得る人工知能(AI)システムを開発した。マッコーリー大学のバネッサ・ピロッタ博士が主導し、学術誌「Frontiers in Ocean Sustainability」に掲載された研究では、AIと既存の空港用CTスキャン技術を用い、密輸されやすい海洋野生生物製品3種──フカヒレ、乾燥タツノオトシゴ、ナマコ──を特定した。結果は目覚ましく、システムはこれらの品目を全体で92%の精度で検知した。
「野生生物取引は残酷で非倫理的だ」とピロッタ博士は声明で述べた。「多くの人にとって、海洋野生生物の違法密輸を耳にするのはこれが初めてかもしれない」。



