アナリストからは警告の声も
モーニングスターのアナリストらは、スペースXは「著しく過大評価されている」とレポートに記し、投資家はIPO終了後に「もっと魅力的な価格水準」で購入できるはずだと主張している。同社のアナリストによると、スペースXの市場価値の大半は「前例がなく、まだ検証もされていない」技術開発の成否にかかっており、同社は今後数年間にわたり「巨額の」支出を強いられる可能性が高いという。トゥルーイストのアナリストも、上場初期の取引期間においては、この銘柄特有のリスクへの警戒感が「最大の焦点」になるとして、ボラティリティが高くなる可能性に警鐘を鳴らした。
映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のモデルとしても知られる著名投資家のマイケル・バーリは、サブスタックへの投稿で、スペースXのIPO申請書類には、2兆ドル(約320兆円)はおろか、1兆ドル(約160兆円)の価値があることを示す内容は「何ひとつない」と述べた。この他にもスペースXの上場に伴うボラティリティを懸念するアナリストは多く、ピッチブックのフランコ・グランダは3月に、スペースX株はまるで「ステロイドを注射されたテスラ」のような激しい値動きをするかもしれないと表現した(テスラは超大型株の中でもボラティリティが激しいことで有名だ)。
フロリダ大学のファイナンス教授であるジェイ・リッターはフォーブスの取材に対し、スペースXの株価は「イーロン・マスク効果」に大きく左右される可能性が高いと語る。この効果はIPOへの需要を押し上げる一方で、マスク個人に起因する長期的なボラティリティをもたらす原因にもなる。またリッターは、スペースXの長期的な取引には別のリスクも付きまとうと指摘し、マスクが他の株主よりも大幅に多くの議決権を掌握し続けることも一因となって「大幅な下落リスク」が潜んでいると述べた。
フィッチ・ソリューションズの子会社であるBMIリサーチは先週のレポートで、OpenAI、アンソロピック、スペースXのIPOが重なることで、株価の下落圧力を招くことなくこれら大量の新株を吸収する市場の能力が損なわれる恐れがあると指摘した。同社は「これらの企業は、巨額の評価額を正当化できるだけの利益を上げられることをまだ証明していない」点を最大の懸念材料に挙げている。
また、D・A・ダビッドソンのマネージングディレクターであるギル・ルリアはロイターに対し、OpenAIが最も避けたいのは「公開市場の資金が枯渇してしまうことだ」と語った。スペースXとアンソロピックがOpenAIに先駆けて上場を果たすだけでなく、他の既存の上場企業も株式売り出しによって数百億ドル規模の資金調達を行う可能性があるとルリアは警告している。
マイケル・バーリは先ほどとは別のサブスタックの投稿で、「アンソロピックが長期的に1兆ドル(約160兆円)に近い価値を持つという保証はなく、その可能性すら極めて低い」と警告した。アンソロピックのAI開発ビジネスは「あまりにもコストがかかりすぎる」と彼は主張し、「現在の状況は、見せかけの需要を示すシグナルにすぎない」と述べた。
S&P500への「スピード採用」の可能性は頓挫
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、新規上場企業に対して設けている12カ月の待機期間を短縮せず、S&P500種株価指数への採用条件である収益性の要件も免除しない方針を発表した。これにより、アンソロピック、OpenAI、スペースXの3社が同指数へスピード採用される道は閉ざされた。指数への採用見送りは各社の上場効果を鈍らせ、S&P500などの指数に連動するインデックスファンドからの資金流入による恩恵を阻むことになる。
もっとも、仮にこの待機期間が明けたとしても、これら3社のすべてが採用される可能性は低い。同指数への採用には、直近の四半期を含めた計4四半期通算での黒字化が義務付けられているからだ。報道によると、OpenAIは2030年まで黒字化を見込んでおらず、スペースXは直近の四半期で約43億ドル(約6900億円)の赤字を報告しており、アンソロピックが純利益の黒字化を予測しているのは2028年だ。ブルームバーグの報道によれば、もし早期採用が実現していれば、スペースXの株式にはインデックスファンドから140億ドル(約2兆2400億円)規模の資金流入があるはずだったという。
近年のIPO銘柄のパフォーマンス
ファクトセットによると、近年のIPO市場はボラティリティが激しく、昨年上場した銘柄の年間上昇率は13.9%にとどまり、S&P500の上昇率である16%を下回るパフォーマンスとなった。ただ、ロイターの報道では、今年4月までに新規上場した企業の調達額は2021年第1四半期以来の最高水準に達しているという。モルガン・スタンレーはレポートの中で、近年の市場の混乱や金利上昇によって打撃を受けていたIPO市場だが、投資家層の拡大を追い風に、2026年を通じて本格的な回復軌道に乗るだろうとの見方を示している。


