決定的な証拠の1つは、国際刑事裁判所(ICC)のルイス・オカンポ元検察官と息子トマスの録画映像だ。2人は欧州で築いた人脈とICC時代の威信を利用して、アルメニアをEU機関に近づける欧州の取り組みを妨害し、最終的にパシニャン首相を失脚に導こうとしていたとされる。インターネット上で拡散されている映像によると、オカンポ親子はアルメニア系ロシア人実業家の資金を利用し、米国のアルメニア系団体と共謀していた。
その背後にある真の目的は明らかだ。ロシアはアルメニアの西側への進出を阻止し、アゼルバイジャンやトルコとの関係正常化を阻害し、ロシアの支配圏外にある欧米やアジアの商業網に統合された南カフカスのエネルギー体制の出現を妨害しようとしているのだ。
一致する米中の利害
この局面が特異なのは、エネルギー分野に限らず、米国と中国の利害が、両国が公に認めている以上に深く重なり合っている点にある。米中は戦略的競争関係にあるが、カフカス周辺の情勢の安定からは双方が利益を得ており、ロシアが不安定要素を持ち込めば双方が損失を被ることになる。この力学はユーラシア大陸だけでなくアフリカでも顕著になっており、ロシアの活動がフランスや米国の長期的な商業的・戦略的利益を損ない、現地の地政学的安定を脅かしている。ロシアは実質的に発展途上国から資源を略奪し、制裁によって圧迫されている自国の経済を支えている。
地政学は不都合な同盟関係を生み出すことがある。冷戦時代、米国はソ連の拡張を封じ込めるために、ニカラグアのアナスタシオ・ソモサや当時のザイール(現コンゴ民主共和国)のモブツ・セセ・セコといった独裁政権と手を組み、反発を招いた。米国は現在、南カフカスで異なる現実に直面している。中国は競争相手ではあるが、ロシアの破壊工作や威圧、管理された不安定化という手法は、米国のエネルギー安全保障や欧州のエネルギー供給源の多様化、地域の連結性にとって差し迫った障害となっている。
中国、米国、そして欧州は、共通の利害が協力を促進し、もろい平和を定着させ、世界の大国間の信頼を形成し、そして願わくは、冷戦時代の激しい対立への逆戻りを回避できるという、またとない好機を迎えている。したがって、米国、中国、欧州、そして英BP、アゼルバイジャン国営石油会社(SOCAR)、仏トタルエナジーズ、伊エニ、米エクソンモービル、米シェブロンといった数多くのエネルギー企業は、アルメニアの選挙を固唾(かたず)をのんで見守っていた。もしロシアによる不安定化工作や偽情報作戦が成功していれば、ホルムズ海峡の危機で既に打撃を受けている国際エネルギー市場は、さらなる打撃を受けていただろう。ロシアの作戦が失敗し、アルメニアの与党が勝利したことで、欧州、中国、米国のエネルギー上の利益は守られることになるだろう。


