政治

2026.06.10 07:30

米中の利害が一致する南カフカス地方、妨害狙うロシアは蚊帳の外へ

アルメニアの首都エレバンにある大統領官邸で握手を交わす同国のニコル・パシニャン首相と米国のJ・D・バンス副大統領。2026年2月9日撮影(Kevin Lamarque - Pool/Getty Images)

アルメニアの首都エレバンにある大統領官邸で握手を交わす同国のニコル・パシニャン首相と米国のJ・D・バンス副大統領。2026年2月9日撮影(Kevin Lamarque - Pool/Getty Images)

マルコ・ルビオ米国務長官は5月26日、アルメニアの首都エレバンを訪問し、二国間の戦略的協力協定を結んだ。この協定は世界の注目を集めた。同国務長官の訪問に先立ち、2月にはJ・D・バンス米副大統領がアルメニアを訪れていた。その際、同国のニコル・パシニャン首相とバンス副大統領は民生用原子力の共同開発に向けた協定に署名した。

アルメニアが位置する南カフカス地方は、戦争が勃発したり、パイプラインが脅かされたり、あるいは大国が勢力圏を拡大したりしない限り、世界が注目することはほとんどない。

だが、同地域はユーラシア大陸で最も戦略的に重要な要衝の1つへと静かに成長してきた。ロシア、イラン、トルコ、そしてカスピ海に囲まれた南カフカス地方は、エネルギー資源の輸送、東西や南北を結ぶ貿易のほか、西側諸国と中央アジアを結ぶ地点として中心的な役割を果たしている。世界のエネルギー安全保障、特に欧州のエネルギー供給源多様化への取り組みの多くは、同地域を経由する輸送に依存している。米国にとっては、同地域がロシアとイランに近接していることから、長期的な地政学的競争やユーラシア大陸の連結性の将来像に直接的に結び付いている。

カフカスを巡る競争

南カフカス地方は、米国、ロシア、中国、イランの間で地経学的競争が交錯する舞台となっている。各国はそれぞれ異なる戦略的視点からカフカス地方を捉えている。ロシアは同地域を自国の「南の急所」と見なし、旧ソビエト諸国に対する影響力を維持するために不可欠な地域と位置付けている。18世紀以来、ロシア帝国と後のソビエト連邦は、同地域をイランやオスマン帝国、トルコに対する作戦の足場としてきた。

イランは、アゼルバイジャンの世俗的なシーア派政権、同国とスンニ派の地域大国であるトルコとの緊密な関係、さらにイスラエルとの協力を強く嫌悪しており、自国を迂回(うかい)する輸送回廊の出現を恐れている。

一方、米国は、欧州のエネルギー安全保障を強化し、中央アジアとの関係を深め、北側からイランに圧力をかける新たな手段を加え、ロシアがエネルギー輸出から得ている強制力を弱める好機とみている。

中国は、社会基盤と貿易という観点からカフカス地方を捉えている。同国の長期的な利益は、独自の思惑を持つロシアやイランといった友好国に依存しない、中国と欧州を結ぶ陸上貿易回廊の構築にある。東西を結ぶ海上航路とは異なり、陸上輸送回廊は、仮に米海軍が封鎖に踏み切ったとしても影響を受けにくい。

こうした米国と中国の利害の一致は、「政治は奇妙な同盟関係を生み出す」という格言を如実に物語っている。米国がカスピ海を横断する「中央回廊」やアルメニアを経由する「国際平和と繁栄に向けたトランプ回廊」を含む広範な地域連結構想を支援している背景には、欧州、カフカス、中央アジア間の持続的な往来を確保したいという願望がある。中国もまた、異なる理由から同様の成果を求めている。両国は安定や機能的な輸送網、そしてアルメニアとアゼルバイジャンの関係正常化から利益を得ているのだ。

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翻訳・編集=安藤清香

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