逢澤:AI時代に必要となるリーダーシップとは何でしょうか。
宮田:AIエージェントの登場によって、これからは特に優秀な人材が「なぜここで働いているんだっけ」と問い直すようになります。そこで問われるのが会社やリーダーの求心力です。「このリーダーと仕事したい」「この会社にいること自体が人生の目的」という感覚をつくれるかどうか。「逢澤さんとやるのが面白いんだよね」って言われるような、人間的な魅力がこれまで以上に価値をもつようになるでしょう。
以前実施したリーダーシップサーベイで、私自身は「中学生のような無邪気なノリで話しているときがいちばん人を動かせている」とわかったんです。それから賢ぶるのをやめ、苦手なことやわからないことをさらけ出せるようになりました。
また、AIによって誰もが80点のアウトプットを出せる時代になり、今後は少しはみ出た尖りがより重宝されていくでしょう。実は、私自身はAIがやや苦手なのですが、部下に「ガンガン推進して!」と開き直るようにしていて、得意な社員がAIプロジェクトチームを立ち上げてくれています。
逢澤:最後に市場創造や公共セクターとの連携の仕方を質問させてください。iibaは東京都での社会実装採択を受け、マイナンバー連携を活用した子育て支援の給付のデジタル化など、公共インフラとしてのプラットフォームを目指しています。スピード重視のスタートアップが「慎重さ」を求められる公共部門とうまく連携する秘訣はありますか?
宮田:スタートアップ企業がよく「ロビイング」という言葉を使いますが、私はあまり使わないほうがいいと思っています。国や行政も「世の中を良くしよう」と頑張っている。私たちは彼らから見えづらい現場の一次情報や課題を提供し、制度設計に貢献するというスタンスのほうが近道ですね。例えば、Nstockでは、未上場スタートアップのセカンダリー(流通)マーケットの普及に向けた国の議論で、投資家保護のために開示を増やそうとする動きに対し、「その制約だと現場は使いづらいですよ」という声を伝えたことがあります。また、行政の時間軸はなかなか読みづらく、法改正の延期などは常にありえます。それを織り込んだ資本政策やバックアッププランを経営としてもっておくことが重要です。
逢澤:自分たちのビジネス領域に大資本が参入してきたときの競争戦略についてはどう考えていますか。
宮田:答えはシンプルで「来る前にスピードでぶっちぎる」です。事業はフルオープンで情報発信して、採用や資金調達のスピードを最大化する。規模が小さなスタートアップでも作れる競合優位性は、ブランディングです。「このジャンルといえばここ」という第一想起を取りに行く。自分たちのプロダクトが本命で、ほかは廉価版──。
SmartHRでは、そう思われるブランドをつくれたのが、大きかったんです。
あいざわ・なな◎1994年生まれ、京都出身で2児の母。新卒でブライダル会社に就職し営業職に従事。リクルートで営業を経験したのち、iibaを創業。子育て特化のマッププラットフォーム「iiba」の開発・運営を行う。
みやた・しょうじ◎1984年生まれ。専修大学卒。2013年にKUFU(現SmartHR)を創業。22年1月に代表取締役社長を退任し、Nstockを立ち上げてCEOに就任。25年にはSmartHR取締役を退任し、現在はNstockに専念。


