2025年の「RISING STAR AWARD」に輝いたiibaの逢澤奈菜が直面する「成長の壁」。権限移譲からカルチャー醸成、市場創造まで、憧れの先輩起業家・宮田昇始に本音の悩みをぶつけ、金言を胸に刻んだ。
昨年の「RISING STAR AWARD 2025」受賞者のi iba・逢澤奈菜。同社が提供する子育て世帯向けのマップ型口コミ情報アプリ「i iba」は、全国10万件以上のスポットを収録し、所属アンバサダーの総フォロワー数は560万人を突破するなど着実に成長中だ。一方で、組織マネジメントやカルチャー醸成など、成長フェーズの企業が直面する「30人の壁」に差しかかっている。その突破口はどこにあるのか。「日本の起業家ランキング2022」で1位を獲得し、i ibaにエンジェル投資しているSmartHR創業者・Nstock代表取締役社長の宮田昇始が、逢澤の切実な悩みに答えた。
逢澤奈菜(以下、逢澤):i ibaのアプリは子育て世帯に着実に浸透し、シリーズAを迎えるフェーズに差しかかってきました。これまでは私が前に出て引っ張る場面が多かったのですが、今後はより組織的な運営が必要になってきます。私自身がボトルネックにならず、いかにメンバーに権限を移譲し、自律的な組織へ発展させていけるか。「起業家から経営者へ」脱皮しなければならないと感じているのですが、宮田さんはどう権限移譲してきましたか。
宮田昇始(以下、宮田):起業家の権限移譲には大きくふたつのパターンがあります。「早く誰かに渡したい」と思うタイプと「なるべく自分でやりたい」と思うタイプです。後者は「自分がやったほうが早い」と思い続けてしまい苦労しますね。私自身は前者でNstockでは共同創業者とドメインエキスパート(株式報酬の専門家)に、Day1からプロダクトを渡しました。 専門性のあるメンバーが揃っていたので、自分が抱えるより彼らに任せたほうが早いと判断したんです。
逢澤:自分の得意・不得意を意識する必要がありそうですね。メンバーはみんな優秀で信頼を置いています。ただ細部へのこだわりはどうしても譲れない部分もあったりし、そのバランスが難しいです。
宮田:不得意な領域から手放すのが定石ですが、得意なことから始める人もいるので、自分の向いているほうでいいと思います。社内に仕事が100個あるとしたら、私が誰よりも得意な仕事も3つくらいはあると思います。その3つの仕事は、そもそも誰かに任せてなかったり、一度任せて戻した経験もありますが、それは例外的で、基本は任せ切ることが大事。
細かい部分は意図的に「見ない」ようにしています。起業したてのころはミスが致命傷になると思い、全部気にしていましたが、それはみんなの成長機会を奪うなと。ミスが起きても、全体への影響が少なければ失敗を見守り、会社全体のレベルアップを図る度量が求められますね。
浸透するバリューは「口にしやすさ」
逢澤:自律的な組織には、共通した判断軸が必要ですが、バリューをつくって終わる会社も多い印象です。カルチャーとして浸透させるコツはありますか。
宮田:会社のミッションを、メンバーが「こういう場合はこう判断する」と言語化できるレベルまで落とし込むことです。SmartHRでは「一語一句にこだわる」というバリューを掲げていましたが、これはUIの細部への向き合い方を示す指針になりました。重要なのは、「ここを大事にするかどうか」という議論を、わざわざしなくて済む状態をつくること。完全な余白ではなく制限のある余白が大事です。浸透のポイントは「口にしやすさ」です。崇高な理念よりも、日常で唱えられるマントラ(呪文)のほうが組織に根付きます。
先ほど紹介したようにSmartHR はうまくハマりましたが、実はNstockで最初につくったバリューは社員の行動の規律となる指針にはならなかったんです。何度も改訂して徐々に浸透させているところです。



