経営・戦略

2026.06.09 15:05

女性役員は増えたのに、なぜ権力は移らないのか

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企業のダイバーシティ推進が政治的な緊張をはらむ局面にあるなか、リーダー職における女性の比率低下は警告サインとして受け止められる。だが、この後退の最も憂慮すべき要因は、見出しの数字の下に隠れているのかもしれない。

2026年第1四半期、ラッセル3000に属する企業の取締役会における女性比率は29.9%へ低下した。50/50 Women on Boardsの最新データによるもので、2024年に30%の大台を超えて以来、初めてその水準を下回った。同四半期には有色人種の女性の比率も7.4%から7.3%へ低下し、4年前に上昇基調に転じて以来、初の反転となった。

数字をさらに詳しく見ると、ある傾向が浮かび上がる。女性の席は、新たに用意された「椅子」に加わるかたちで生まれてきた一方、男性は、もともと存在した席を男性同士で奪い合っていた。2026年第1四半期に女性が獲得した138席の大半は、取締役会の拡大によるものだった。これに対し、同期間に男性は404席を得て218席を失っており、より1対1の置き換えに近いパターンである。

取締役会レベルでの増加は、根底にある権力構造に触れないまま、進展しているかのような見かけをつくり出した。そしてデータが示すところによれば、米国企業は相当以前から、組織図の各層でこの戦術を用いてきた。

パターンは企業内の階層を下へ降りていく

リーンイン財団とマッキンゼーのWomen in the Workplace 2024年版レポートの共同執筆者として、私たちは2018〜2024年にかけてVP、SVP、Cスイート層で見られた女性比率の増加が、主として「上乗せ」によるものだったことを確認した。増加の大半は、企業が新たなスタッフ職を設け、その新設ポジションに女性を採用する可能性が高かったことによって生じた。既存のライン職で男性を置き換えることが主要因ではなかった。レポートは限界も明確に示した。企業は新たなスタッフ職を無限に追加できない。

それから2年後、50/50 Women on Boardsの2026年第1四半期データは、同じ仕組みが取締役会レベルでも作動していること、そして同じ脆さを抱えていることを示している。

スタンフォード大学のVMware Women's Leadership Innovation Labに所属する社会学者で、Women in the Workplaceの共同執筆者でもあるマリアン・クーパーは、上乗せによる増加は一時的なものになるだろうという見立てを以前から持っていたという。Women On Boardsの新たな取締役会データは、人員数データだけでは見えにくい、そうした席の持続性について疑問を投げかける。

「それらは企業が何十年も取締役会で持ち続けてきた、実績のある典型的な役割ではありません」と彼女は言う。「では、こうした新しい役割はどれほどの権限を持つのでしょうか。とりわけ、取締役会で新しい役割を担う新任メンバーである場合は」

地位の権力と構造の権力の違い

肩書き、受託者責任、委任状における投票権。取締役の席は、目に見える権力の印を備えている。だが実際に権力を持つかどうかは別問題である。私がLeadership On New Termsとともに構築してきた枠組みは、その答えを左右する構造的な次元へ繰り返し立ち返る。すなわち、範囲、速度、可視性、リスク、評価、退出。これらが、その席が本当に重みを持つのか、見かけに過ぎないのかを決める。

2026年第1四半期の取締役会データは、この乖離のケーススタディである。女性は肩書きを持ち、会議に出席し、委任状で投票できる。しかし、彼女が座る席が、取締役会が拡大を選んだ結果として昨年つくられたものであり、何十年も存在する席を持つ古参の取締役が、彼女の参加を互いに対するときとは異なる扱いで受け止めるなら、実際の権限の範囲は肩書きが示唆するほど広くない。

地位の権力は取締役会に追加できる。構造の権力は、すでにそれを持つ誰かから奪い取らなければならない。

別の問いを立てよ

明確にしておこう。新設の取締役ポストであるという理由で、女性が取締役就任を断るべきではない。権力の座にいる女性は、席がどう生まれたかにかかわらず、より多く必要だ。実際、いま企業の取締役会に追加されている最も重要な役割の一部はAI関連である。仕事が新しいから席も新しい。そしてそれを担う女性たちは、置き換えるべき「既得権者」がまだいない権力の領域に踏み込んでいる。

しかし、AI関連の席に迎え入れられる女性と、刷新されたESG委員会に迎え入れられる女性は、同じ条件で参加しているわけではない。さらに、取締役会が2年前より「違って見える」ことを望んだというだけで新設された席に迎え入れられる女性も同様である。

今年、取締役に迎え入れられる女性にとって、面接で問うべきは「私は誰の席を引き継ぐのか」かもしれない。

クーパーも独自に同じ結論に達した。「『この役職の前任者は誰ですか』と聞くべきだと思います」と彼女は言う。「それが新しい役割なのか、既存の役割なのかを見分けるとても簡単な方法です。もし誰も担っていなかったなら、それは新しい役割だからです。では、なぜこの役割がつくられるのでしょうか」

答えが「取締役会を拡大している」なら、その候補者は上乗せパターンに組み込まれている。参加する前にそれを理解しておくべきだ。答えが特定の人物名であれば、企業は実際の権力を再配分している。「新しい役割で、誰も担ったことがないのかもしれません」とクーパーは言う。「だからこそ、目を見開いたまま歩むことが、おそらくいちばん重要です」

この問いは10秒で投げかけられる。そして、過去10年にわたり他のダイバーシティ指標が覆い隠してきた事実──取締役会が権力の担い手を変えているのか、それとも椅子を増やしているだけなのか──を浮かび上がらせる。

反転は始まりにすぎない

今年第1四半期のデータは、代表性の有意な低下を示しているが、この10年に女性が取締役の席を得てきたやり方を踏まえると、さらに低下する可能性がないとは言えない。

「変化のスピードは、これまでも信じられないほど遅かった」とクーパーは言う。「明るい兆しはあった。しかし今、本当の後退が起きるかもしれない。1歩進んで2歩下がるどころか、今回は何歩も後退する可能性がある」

次の四半期に注視すべき数字は、ラッセル3000の取締役会で、誰かを置き換えることで席を得た女性の比率である。その比率こそが、構造的に何かが変わったかどうかを教えてくれる。

forbes.com 原文

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