【重要】会員機能一時停止とサイトメンテナンスのお知らせ

RISING STAR

2026.07.04 11:30

投資の基準が激変、大混乱期のスタートアップに必要な新しい戦い方

創業3年以内のスタートアップ起業家を応援する「RISING STAR」プロジェクトの始動から8年。資金調達シーンの二極化やAIネイティブの登場、国策との共闘という地殻変動が起きるなかで、起業家たちの戦い方は今、根底から変わりつつある。


スタートアップの二極化が進んでいる。ビジネスが顕著に伸びている企業には資金や優秀な人材がどんどん集まり、そうでない企業は苦戦を強いられる。Power Law(冪乗則=特定の少数が大多数に比べて極めて大きな影響力を持つ法則)はこの世界の常だが、2021年末に資金調達バブルが崩壊して以降、投資家による選別は年々強まっている。

特に最近は、グロース以降のステージだけでなく、シード・アーリー期でもこの様相が色濃くなっている。例えば、25年3月設立のThird Intelligence。東京大学大学院教授の松尾豊らが設立したこのAIスタートアップは、26年1月までの初回ラウンドで総額100億円の資金調達を実施。設立1年足らずで推定企業価値は1100億円となった。

スピーダの調査によると、25年の国内スタートアップ資金調達総額は7613億円、調達社数は2700社(26年1月18日時点)。前年同時期の集計額からほぼ横ばいだった。設立後経過年数別では「1年未満」が331億円・449社、「1年以上3年未満」は1057億円・590社。Speeda Startup Lab スタートアップアナリストの平川凌は、「全体としては昨年と同程度」としつつも、「シリーズAで投資をするVCのスタートアップに求めるトラクションの数値感が大きくなっている」と直近の変化を分析する。

背景にあるのは、VCのファンドサイズの大型化や東証グロース市場の停滞、上場維持基準の見直しといった事情だ。VCはより大きなイグジットを生み出さなければアルファ(超過収益)を得られないため、投資の目線感が上がっている。ジェネシア・ベンチャーズ代表取締役の田島聡一は、「例えば、以前はMRR(月次恒常収益)1000万円程度でシリーズAの調達ができたような会社が、現在は2000万円以上ないと難しいといった状況だ。事業だけでなく、起業家自身の優秀さへの要求水準も高まっている」と話す。「シードとシリーズAの間にあるクレバス(溝)の幅が広がっている。シード期に十分な資金を確保しておかないと、シリーズAにたどり着く前に力尽きてしまう状況が生まれている」。特定業界でシェアを確保できているか、グローバル規模でスケールしているか、過去のキャリアで大きな実績を上げたかなど、一定要件を満たした少数に資金が集中する構図が鮮明だ。

一方、25年のファンドの設立動向を見ると、シードアーリー選好の新設ファンドは、ファンド総額が2597億円と前年の1879億円から拡大し、設立数も58本と過去最高だった22年の60本に迫る数字だ(スピーダ調べ)。「既存のVCから独立するキャピタリストが増えており、彼らが立ち上げるのはシードアーリー選好ファンドの場合がほとんど」(平川)。こうしたファンドは、独自性のある投資戦略を打ち出すケースが多く、成長資金の出し手の層に厚みが出てきたことは良い傾向といえる。

例えば、元B Dash Venturesディレクターの山崎良平が26年3月に立ち上げたDelta X。1号ファンドは10億円規模を想定しており、シード期のAIネイティブなスタートアップのみを投資対象とする点が特徴だ。VCにとって、AIはここ数年で最大の投資テーマとなっている。生成AIが普及し始めた23~24年ごろは、既存のITサービスにAI機能を加えたパターンの企業や、生成AIの導入支援を行う受託開発型のAIコンサルティング企業が多かったが、最近では業界特化型のAIエージェントなど、プロダクトの設計開発も組織運営もAIを前提にしたスタートアップが増えている。「AIネイティブの波がもたらすのは、過去のSaaS以上の変化だ。ソフトウェア業界を根本的に変えていく」と山崎は話す。SaaSでは人間が使うツールを提供してきたが、AIネイティブなプロダクトは人間の業務そのものを代替する。「米国ではローンチから21カ月でARR(年間経常収益)1億ドルを達成したSierraなど、ものすごいスピードで成長する事例が出ている。日本でも今年から来年にかけてすごいトラクションをたたき出す企業が生まれると予測している」(山崎)。

次ページ > AIネイティブ「極小の巨人」の衝撃

文=眞鍋 武 イラストレーション=Kouzou Sakai

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事