ひとつは競合の機能に対する「アップルらしさ」の再定義だ。例えばアップルが発表した新しいAI関連の機能やサービスの中には、グーグルの「Gemini」と「Pixel」デバイスの組み合わせなど、他社のAIエコシステムでは先行して実現しているものも少なくない。アップルはOSへの深い統合とプライバシー保護を同社の絶対的な強みとしているが、個別の機能の優劣だけでなく、それらがユーザーの生活体験をどう一変させるのかという「アップルを選ぶことの理由」を明確に示しながら、他社に勝る体験価値として前面に押し出す腕力が必要だ。
次に、ビジネスモデルの持続性とマネタイゼーションだ。新しいApple Intelligenceは基本的に無料で提供され、例えば画像生成のように大きな負荷のかかるタスクにおいては、iCloud+のサブスクリプションサービスに「生成クレジット」のようなオプションをつくり、計算コストに応じて従量課金やサブスクリプションを求めることを検討するようだ。今はユーザーの間にも「高度なAIサービスにはお金がかかる」という認識が育ちつつあるから、筆者はこのアップルの方針は妥当だと思う。あるいはヘビーに活用したいプロユーザー向けに制限を取り払い、快適さを担保するApple Intelligenceの「有料プレミアムプラン」を設けることもまた、インフラ維持の観点から十分に検討の余地があるはずだ。
そして最後にエコシステムの拡張戦略だ。これまでアップルは自社製ハードウェアの中にユーザーを囲い込む戦略で成功を収めてきた。今後はApple Intelligenceの各機能を独立させ、AndroidやWindowsなど他社のプラットフォーム向けにアプリやサービスとして、切りだして提供するビジネスモデルもあり得ないだろうか。AIによる利便性がデバイスの垣根を越えつつある中、アップルの卓越したAIテクノロジーとプライバシー基準をより広範な市場で展開していく柔軟な発想も、より多くのユーザーとの接点をつくり、データを確保しながらApple Intelligenceを鍛えるために欠かせない。
再構築されたSiriとApple Intelligenceの登場は、私たちのAppleデバイスとの関わり方を根本から変える転換点になるだろう。新しいSiri AIの機能は次世代バージョン「27」のiOS、iPadOS、macOS、visionOS 27に始まり、少し遅れてwatchOS 27から、対応するデバイスを英語に設定しているユーザーにベータ版として提供される見込みだ。
気になる日本語対応の時期については触れられていないが、アップルは「さらに多くの言語への対応を迅速に拡大する」と宣言した。今後、新しい「アップルのAI」が競合他社のサービスに並んで、私たちの日常に溶け込むまでに成長できるのか、引き続き注目したい。
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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